新型コロナウイルスの感染状況が落ち着ついてきた今、停滞していた経済活動も元に戻りつつある。それに伴い、テレワークをめぐる企業の対応も大きく分かれている。ホンダは5月から全従業員を対象に原則的に週5出社となった。一方で、NTTは7月から国内グループの従業員3万人を対象にテレワーク(在宅勤務)を原則とする勤務制度となる。出社とテレワークを組み合わせた「ハイブリッド型」を含め、企業は従業員の働き方を模索しているが、それぞれの企業で抱える“課題”は異なる。テレワークを続ける企業とやめる企業では、どのような判断の違いがあるのか。また、従業員の満足度や採用にはどのような影響があるのか。識者に取材した。
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「今はちょうど、コロナ下でテレワークを実施した企業にとって、“良い面”と“悪い面”がみえてきた時期です。その結果をふまえて、各企業は『ウチはどんな方針にしたらいいのか』と悩んでいます。経営側からすれば、完全テレワークはやはり生産性やイノベーションへの不安がある。その一方、従業員はテレワークを継続してほしい人が多く、人材確保にも影響が出る可能性がある。その板挟みで、思い切った決断に踏み切れない状態にある企業も多いはずです」
パーソル総合研究所の小林祐児・上席主任研究員はこう語る。
今年2月、同研究所が全国約2万5000人を対象に行った調査では、正社員のテレワーク実施率は全国平均で28.5%。「第5波」があった昨年7月末が27.5%だったので、ほぼ横ばいだった。
そんな中、ホンダも在宅勤務を推奨していたが、5月のGW明けからは、原則週5日出社に方針転換した。工場や研究所なども含め、すべてのオフィス、部署が対象となる。ただし、育児や介護などの事情があれば、引き続き在宅勤務できるという。
企業がテレワークを導入してからおよそ2年。この間に“課題”も浮き彫りとなった。小林さんはメンタルヘルスの問題を一番に挙げる。
「職場に出勤していた時は、パワハラやセクハラが大きな問題になりましたが、テレワークになったことで、直接的な被害は減りました。その一方で、『誰も助けてくれない』とか『何のためにこの仕事をしているのかわからなくなる』など、孤独感に苛まれる人が増えた。ハラスメントとは別の問題で、メンタルに不調をきたす人が出てきてしまったのです」