ミッツ・マングローブ
ミッツ・マングローブ
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「純烈の新メンバー」について。

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 ご存知、歌謡グループ「純烈」の小田井涼平さんが今年限りで脱退されるとか。それに伴い新メンバーを加入させる予定の純烈ですが、特に募集やオーディション告知などがされていないにもかかわらず、連日「新メンバー立候補」を表明する芸能人が後を絶ちません。これも偏(ひとえ)に純烈が築き上げた気のおけなさのなせる業(わざ)だと、改めて彼らが「国民的グループ」であることに気付かされます。

 本来、人気絶頂時のメンバー交代は大きな賭けです。私が子供の頃、オトナたちは事ある毎に「志村けんより荒井注がいた時のドリフの方が面白かった」と言っていたのを思い出します。記憶に新しいところでは、SHUN脱退後に新生EXILEのボーカルになったTAKAHIROさんもいろいろと苦悩されたと聞きますし、メインボーカルの寺田恵子さんが抜けた後のSHOW-YAや、MINAの代わりにAKIが加入した時代のMAXも忘れてはいけません。

 例えばNEWSやKAT-TUN、ドリカムや東方神起のように、メンバーが減る・分裂することもファンにとっては一大事ですが、それ以上にそこへ新メンバーを迎え、景色や音を変化させるというのは、ともすれば熱狂的な消費意欲をリセットさせてしまうリスクも大いにあると言えるでしょう。むしろ様々な変化に寄り添いながら観続けることもまた、芸能鑑賞の醍醐味のひとつです。しかし時にはそう簡単に割り切れないケースもあります。印象的だったのは、ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」における「岡倉大吉役の交代」です。初代・岡倉大吉役だった藤岡琢也さんが病気で降板されたことによる宇津井健さんへのバトンタッチだったわけですが、突然かつ唐突だったせいもあり、結局その戸惑いは最終シリーズまで払拭されず……。特に「渡鬼」がファンタジー色のまったくない極めてリアルな作品だからこそ、「ある朝起きたら父親が宇津井健になっていた」という衝撃は、「ドラえもん」よりも「E.T.」よりもSFでした。

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