「ロシア軍の兵士たちは何もかも強奪していった。貴重品以外にも、家具や衣類、下着まで、やつらのベースキャンプへと運び込んでいった。ある男性は、兵士の集団にレイプされた揚げ句、翌朝自殺してしまったんだ」
ヨーロッパ諸国は、この事態を受けNATO(北大西洋条約機構)の結束を強めており、対立の構図はより鮮明となってきている。ロシアは正当性を主張し続けているが、国際法違反の侵略、殺戮(さつりく)は許されるものではない。黒海を挟み、ロシア、ウクライナの対岸に位置するトルコは、ウクライナ侵攻に対する世界の反応を窺(うかが)いつつ、ここ数年のシリア侵攻をさらに加速する姿勢を見せている。
戦火の影響もあり、穀物価格は過去最高を記録し続け、アフリカ東部では飢餓の危機に直面している。大国の思惑が、数えきれないほどの日常を破壊し、それを正当化するための大義が声高に叫ばれている。人類はまた、「戦争の世紀」を繰り返すのだろうか。(フォトジャーナリスト・佐藤慧)
※AERA 2022年7月4日号