政治ジャーナリスト/星浩氏
政治ジャーナリスト/星浩氏

 そうした情勢を見て、岸田首相が優先するのは経済の立て直しだ。持論の「新しい資本主義」を具体化し、「岸田カラー」を打ち出したいところだ。もっとも、株式の譲渡益などへの課税を強化する富裕層増税は、株式市場から反発を受けて頓挫。起業への支援策などを盛り込むが、大風呂敷を広げた割に、中身は乏しい。

 年末の予算編成までには、防衛費の増額や社会保障の支出増などが予定される。コロナ対策として支出した、ワクチンの経費や各種の給付金などで借金は90兆円に上るという。官僚たちからは「増税」を求める声が出始めている。消費税率の引き上げは難しいとしても、法人税や所得税の増税をどういう形で打ち出すかが焦点になっている。

 安倍氏は参院選期間中も金融緩和を継続し、財政出動も進めるべきだと主張。生前、親しい国会議員に「岸田さんは財務省に言われて増税を考えるかもしれないが、それはダメだね」と語っていたという。安倍氏の不在で、岸田首相が「参院選までは封印」してきた増税や負担増の計画がじわじわと表に出てきそうだ。

 安倍氏を欠いた自民党では、権力争いや政策論争が幕を開ける。黄金の3年になるか、泥沼の3年になるか。岸田首相の決断の日が迫る。

週刊朝日  2022年7月29日号

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