古来、日本では「春は花、秋は月」を愛で、季節を楽しんできました。月見は「中秋の名月」を鑑賞する伝統的な行事です。澄み渡る秋の夜空に昇る月に、人々は収穫の感謝を込めて祈り、来年の豊作を願いました。

今年は、8年ぶりに名月が満月となります。ぜひ、一年でいちばん美しいとされる月を楽しみたいですね。

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「十五夜」「中秋の名月」が、いつも満月とは限らないのはなぜ?

「中秋の名月」は「十五夜」ともいわれるように、旧暦(太陰太陽暦)8月15日夜の月こと。旧暦で秋にあたるのは、7・8・9月で、それぞれ初秋・中秋・晩秋と呼ばれていました。そのため、この日の月を「中秋の名月」と呼び、一年のうちで最も美しいとされ、古より観月の行事が催されてきました。

中秋の名月は、必ずしも満月なるとは限りません。旧暦では新月の日を朔日(1日)としていました。そのため、月の満ち欠けの中間点にあたる15日が満月であると考えられていたのです。実際には、月の公転軌道は楕円形で、新月(朔)から満月(望)までの日数は13.9日から15.6日と変化があります。2021年は、8年ぶりに中秋の名月が満月になります。

収穫祭と結びついたお月見。「十三夜」も忘れずに!

中秋の名月を鑑賞する風習は、平安時代に中国から伝わったといわれています。月見は貴族の行事として定着した後、江戸時代には庶民の間でも広く行われるようになりました。

やがて、農耕行事と結びついて収穫祭の意味合いを持つようになり、米から作った団子、里芋や栗などを供えて実りに感謝し、来年の豊作を祈願したのです。当時は、月の運行に基づく旧暦を使用しており、「月読命(つくよみのみこと)」が、農耕の神として信仰されていました。

中秋の名月の1か月後、旧暦9月13日にも名月を鑑賞する日本固有の風習があります。かつては、十五夜の月見をして十三夜の月見をしない「片月見」は、縁起の悪いこととされていました。十三夜は、「後(のち)の月」「豆名月」「栗名月」とも呼ばれます。「十三夜に曇りなし」という言葉があり、十五夜よりも晴れることが多いともいわれています。今年の十三夜は10月18日。すこし欠けた「後の月」も、ぜひ鑑賞したいですね。

「中秋の名月」が満月になるのは8年ぶり。「有明月」にも注目

2021年は、久しぶりに満月を楽しめるお月見となります。2023年までの3年間は中秋の名月と満月の日付が一致します。その後は、7年先の2030年まで待つことに。

9月21日の朝8時55分頃が「望」になる時刻で、21日の夕方18時頃に東の空から昇ってくる月は「望」から9時間ほど過ぎた月です。そのため「望」の状態により近いのは、21日の未明から明け方に西の空に輝く月ということに。満月に近いのは「有明月」、名月は「宵月」ということになりますね。明け方と宵、1日に2回お月見を楽しむのも良いかもしれません。

【中秋の名月と満月の日時(望の時刻)】

●2021年

名月・満月/9月21日(08:55)

●2022年

名月・満月/9月10日(18:59)

●2023年

名月・満月/9月29日(18:58)

●2024年

名月/9月17日

満月/9月18日(11:34)

●2025年

名月/10月6日

満月/10月7日(12:48)

●2026年

名月/9月25日

満月/9月27日(1:49)

参考文献

『アストロガイド 星空年鑑 2021』 アストロアーツ

岡田芳朗・松井吉昭『年中行事読本』 創元社

参考サイト

アストロアーツ

国立天文台

画像提供:国立天文台
画像提供:国立天文台