
大学志願者数が減少するなかでも理工系や情報系学部の人気は根強い。滋賀大のデータサイエンス学部を皮切りに、データを駆使する教育に力を入れる大学も続出。21年度に、南山大学、鈴鹿医療科学大学、大阪工業大学、岡山大学などで、データサイエンスに関連する学科が立ち上がった。
「データサイエンスは文理融合の最たるもの。日本の先端的理系教育は旧帝大を中心とした伝統的に理系に強い大学が牽引すればいい。その他の総合大学では、データサイエンスを用いながら高大接続に真剣に取り組み、豊かな大学像を育む必要があります」
そう指摘するのは、中央大学AI・データサイエンスセンターの樋口知之所長だ。20年4月の同センター設置を足掛かりに、同大では今年4月から全学部を対象にしたAI・データサイエンスの授業を開講。さらに理工学部にある経営システム工学科の名称をビジネスデータサイエンス学科に変更するなど、本気度の高さが見て取れる。
樋口所長は言う。
「深層学習や自動運転といった高度なシステムの開発は大学院に進むような学生が習得すればいい。今の社会では、AIやデータサイエンスの専門家とコミュニケーションをとれる人材が不足しています。この問題を解決したい」
■くずし字もAIで読解
授業では「AIやデータサイエンスとは何か」といったリテラシーから、統計学や機械学習まで幅広くカバーする。テクノロジーが発展すれば、法律的な問題や社会規範などの課題も浮き彫りになる。AIにある強みと弱みを俯瞰できる人材を育てることが狙いにある。
「ビジネスも学問も足し算ではなく、掛け算の時代です。古典籍のくずし字が、AIで読解できるようになりました。これは、文学とAIの二つの素養が掛け合わさったからこそ実現したツールです」(樋口所長)
応用基礎レベルに達した学生には、修了証も授与される。初年度にもかかわらず、定員の8倍を超える受講希望生が集まる科目もあり、期待も高い。
樋口所長はこう予測する。
「今、世の中で最も価値があるものは情報です。そして、すべての人間活動はデータに基づいて意思決定されていくと考えています。だからこそ、AIやデータサイエンスを学ぶことに意義があります」
(編集部・福井しほ、教育ライター・柿崎明子)
※AERA 2021年4月19日号より抜粋