野口健(以下、健):僕は毎年ヒマラヤに行っていますが、まさにこの問題に直面しています。氷河がすごい勢いで溶けていて、ヒマラヤ地域で洪水が起きていたりするんです。あとは、雪崩が増えましたね。10数年前、エベレストのベースキャンプにハエが飛んできたことに当時みんなびっくりして、国際ニュースになったんです。ところが今は見慣れてしまって、誰も話題にしなくなった。最初はみんな注目するけれど、慣れてきて被害だけがどんどん広がっていくという怖さがあります。
岸紅子(以下、岸):気候変動で台風被害が年々悪化していることは、みなさん肌身で感じていますよね。

たかまつ:太平洋クロマグロは絶滅危惧種に登録されていることをご存知でしょうか。1960年代はじめからの60年間で、親魚が約7分の1まで減ったそうです。これは若いクロマグロを獲りすぎてしまったことが原因の一つ。なんと、世界中で獲れるクロマグロの約8割が日本で消費されています。また、人口の増加や経済発展などで世界中で必要な水の量がどんどん増えていって、水不足になる未来が遠くないと言われています。20世紀は石油をめぐる戦争がありましたが、今後は水をめぐって各国が戦争する時代が来るかもしれない。
健:僕はよくアフリカに行くんですが、ケニアとスーダンの国境辺りでも、井戸をめぐって地域の民族同士がドンパチやってるんです。もっと大きい規模では、スーダンが大きいダムを造ったところ、エジプトに流れる水が大幅に減り、両国が大変な緊張状態になった。同様のことが他の場所でも起きています。

たかまつ:なんと池袋駅がある東京の豊島区が、2014年に人口が減って存続が厳しくなりそうな消滅可能性都市になってしまったんです。危機感を覚えた豊島区は、少子化対策を始めています。
岸:少子化は、世界的にも先んじて日本が直面している問題。どこかに人口が一極集中するのではなく、地域に分散しながらもつながり合っていけることが理想ですよね。それぞれの地域に根ざした活動やサービスが一緒になった政策が不可欠です。

たかまつ:一つの国の中でさまざまな国籍の人が暮らすのは当たり前の時代ですが、一方でテロの発生が心配されています。近年発生しているフランスのテロ事件の多くは、かつて外国から移り住んできた移民やその子孫によるものが多くあります。移民の多くは貧しい地域に暮らし、安い給料で働いています。移民というだけで差別を受けてしまうこともあります。