
■無病息災を願いつつ涼を味わう 初雪のような「鴨の氷室の氷」
下鴨の和菓子店「宝泉堂」が手掛ける下鴨神社境内、休憩処「さるや」では、夏限定のかき氷を味わうことが出来ます。古事にならい、暑い夏を平穏無事に過ごせるようにと「鴨の氷室の氷」と名付けられた氷は、まるで天からふわりふわりと舞い降りたばかりの初雪を集めたように、柔らかく儚い口溶け。添えられた抹茶の蜜をそっと氷にかけながら少しずつ口に運ぶと、抹茶の風味と自然な甘味が口いっぱいに広がります。森の樹々の囁きや、鳥の声を聴きながら味わう氷は、身体いっぱいに“涼”を感じることが出来るのです。氷の種類は、抹茶小豆、黒蜜白玉練乳がけ、イチゴ練乳がけの3種類。氷を味わった後は、下鴨神社の御神紋の植物「カモアオイ」(双葉葵、賀茂葵)が描かれた葵の器でいただくお茶で喉を潤します。

■愛でる涼菓 水に揺らめく金魚の姿
寺町通のひと筋東側、民家の中に静かに佇む「松彌(まつや)」は、1888(明治21)年「いろは餅本店」として創業され、戦後に現在の場所へ移転しました。京都の豊かな四季を映し出す創作和菓子で広く知られています。ご主人である國枝さんの創作の原点は日々のお散歩。鴨川を愛犬と散歩している時に感じた一瞬の風の動きや四季折々の花々など、暮らしのふとした出来事から和菓子の構想を編み出されているそうです。
今から約40年ほど前、近くの下御霊神社のお祭りで見かけた金魚すくいからイメージが膨らみ、試行錯誤を重ねて出来上がったという「金魚」は、夏になると必ず愛でたくなる和菓子です。寒天で作られた淡いブルーと透明な水の中には、羊羹の水草と二匹の金魚(リュウキンとデメキン)が泳いでいます。その姿は、何とも愛らしく、食べてしまうのが惜しい程。十分に愛でた後、口に含むと、ほんのりとした梅の味が爽やかに感じられます。