──劇中で重要な役割を果たす猫の登場シーンはCGを一切使わず撮影した。ルイス役の人気俳優ベネディクト・カンバーバッチも、猫との共演を楽しんでいたという。
猫はご存じのように気ままで自分のタイミングで動きます。猫の登場シーンでは全員が「猫モード」になり、彼らに合わせて予定を組み、大きな音を立てないように気を使いました。時に「猫待ち」になることもありましたが、ベネディクトは「猫が一番のスターだよね」と実に忍耐強く、最高の共演をしてくれました。うまく演じた猫たちにご褒美としてチキンをあげていたのですが、彼はふざけて「僕のチキンどこ? 僕はもらえるほどの仕事をしていないってことなの?」とジョークを言っていました(笑)。
──イギリス人の父と日本人の母のもとに生まれたシャープ監督。8歳まで日本で過ごし、インタビューでも日本語のリスニングはほぼ完璧だった。
祖母はいまも日本に住んでいますし、ほかの国とは違う特別なノスタルジアを感じます。東京・代々木の国立競技場にヴェルディの試合を観に行った思い出もあります。それに僕は日本のコメディーで育ったんです。「志村けんのバカ殿様」やとんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ドラマ「古畑任三郎」も大好きでよく観ていました。そうした日本の文化に一番影響を受けた気がしています。
子どものころから物語を書くことが好きでしたが、家族にクリエーティブ系の仕事をしている人はいなくて、そういう仕事の選択肢があるとも知りませんでした。
でもイギリスの学校で演劇の授業に触れたんです。そのとき母に言ったことを今でも覚えています。「演劇って人のふりするだけじゃない? それって難しいことかな?」って。そうして演技のおもしろさを知っていきました。
──ケンブリッジ大学を卒業後、ロイヤル・シェークスピア・カンパニーに所属。映画の脚本や監督を手がけるようになる。
書くことも演じることもすべては同じストーリーテリングだと思います。だからカメラの前にいるか後ろにいるかは、僕にとって大差がないんです。