日本のある地方都市を舞台に、国籍の違いや血のつながりを超えて“家族”になろうとする人々を描いた「ファミリア」。実際の事件に触発された内容には、日本に20万人以上いる在日ブラジル人たちの実情も織り込まれている。主役の役所広司さんに聞いた。
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――妻を早くに亡くし、山里で一人暮らす陶器職人・神谷(役所広司)のもとに、アルジェリアに赴任中の一人息子・学(吉沢亮)が一時帰国してくる。学は現地で出会った妻・ナディア(アリまらい果)を連れていた。二人の結婚を喜ぶ神谷は、あるきっかけで隣町に住む在日ブラジル人青年マルコス(サガエルカス)と関わるようになる。
神谷は児童養護施設の出身で昔はやんちゃだった、という設定です。腕っぷしは多少強くて、最後には若者の未来のために命をかけて動こうとする男です。自分の家族や息子のためだけでなく、他人であるマルコスのために行動する。子どもたちのために頑張ってくれるこんな大人がもっといればいいなと思えるような作品になればと演じました。
――在日ブラジル人へのまなざしが映画の大きなテーマでもある。実際に彼らが多く住む団地で撮影をし、住民たちもエキストラとして参加した。
僕は1995年の「KAMIKAZE TAXI」(原田眞人監督)で、ブラジルから出稼ぎに来た日系ペルー人のタクシー運転手役を演じ、実際に同じ立場の人たちに話を聞いたことがあります。彼らは一様に「私たちは使い捨てだ」と言っていた。この映画でも彼らはまったく同じことを言っています。在日ブラジル人社会はもう2世、3世の時代になっているのに、いまだに彼らは日本での生活に苦労している。30年たっても状況はよくなってないと実感しました。
――劇中、建築現場で働くマルコスは、あるトラブルからクビになり半グレ組織に目の敵にされる。彼の父はリーマン・ショックで解雇され、自殺していた。映画には社会に差別され、顧みられない彼らのやりきれなさや、未来の見えない状況が映る。