
渡部:私は吉岡秀隆さん。
志の輔:素敵な青ですよね、何とも言えず切ない。
渡部:切ないイメージの人ですよね。北国に行ったり、南の孤島に行ったり、なんかずっと幸せそうじゃなくて。
志の輔:役のイメージとしてね。本当はお幸せなんでしょうけど(笑)。
松尾:僕は木村(充揮)さんにしよう。あの絞り出すような誰にもまねできない声。どんな苦労したら出るんだろうと思いますが、この作品にも木村さんのブルースみたいな独特の世界観がある。
■肖像画と似顔絵 違いは「批評性」
志の輔:ところで、松尾さんが2代目塾長になったのはいつでしたっけ?
松尾:今年の新年号からです。
渡部:発表は(肺塞栓症で)緊急入院される前でしたよね。
志の輔:新塾長になって、入院して、紀伊國屋演劇賞という立派な賞ももらって。大変な年末年始でしたね。
松尾:そうですね、ありがたいことに。でも、似顔絵塾は体力を使わないから(笑)。自画自賛じゃなくて自選自賛ですけど、こうして並べると良い作品がそろったなぁと。
志の輔:本当にね。似顔絵塾を見ていつも感心するのは、よくぞ気付いたという着眼点。人物の切り取り方と広げ方がすごい。僕、よく弟子に「30分の落語の粗筋を30秒で言ってごらん」と考えさせるんです。いろいろな角度で拵えてみると、噺の大事なポイントや面白さが見えるようになるからと。うまい似顔絵には、それと近いものを感じます。
松尾:無駄の省き方も大事です。山藤先生が言ってたのは、肖像画は本人が喜ぶけど、似顔絵は喜ばない。つまり、批評性があるかどうか。
志の輔:ジュリーはドンピシャ世代なので、編集長の気持ち、かなりわかりますよ。僕、落語以外のジャンルにもいろいろ出してもらっているおかげで、思いもよらぬ方々が落語を聞きに来てくださるんですが、この人が自分の落語を聞いてくださるなんて夢にも思わなかった、というお一人がジュリーなんです。
渡部:え!!
志の輔:毎年、渋谷のパルコ劇場でお正月にやってる「志の輔らくご」も下北沢の本多劇場でやってる「牡丹灯籠」も、田中裕子さんとご夫婦でおいでになって。この前長崎の落語会の楽屋に、ジュリーから長崎の有名なお餅が山のように届いていたこともありました。その日の同じ時間に、ジュリーも長崎の別の会場でコンサートだと知って「これは大変だ、とにかく急いで何かお届けしなきゃ!」って開演前に大騒ぎ(笑)。