「耳で見る」という境地に達することができれば、そこからものまねのアイデアが自然に見つかる。音から姿形を想像して、姿形から音を思い浮かべる。「想像から創造へ」という過程から唯一無二のものまね芸が生まれているのだ。

なぜ「ものまね」は面白い

 ものまねはなぜ面白いのか。改めて考えてみると不思議なことだ。もともとものまねというのは、似ていることで感心させるという芸だった。ただ似せるだけではなく、笑いの要素を入れて、爆笑させるネタに仕立て上げたのは、コロッケと、その同世代のものまね芸人たちの功績だ。

 似ているけど、本人じゃない。似せているけど、過剰すぎて似せようとしていない。少しだけズレていたり、少しだけズラしたりする。このズレこそが笑いの核心であり、コロッケが生涯かけて追い求めてきたテーマでもある。

 似せることの向こう側に笑いを見出し、それを突き詰めてきたものまね職人。満身創痍で芸に向き合うコロッケの生き様は多くの人の心を震わせる。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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