
不自然な不在が示すもの
第5話を考察するうえで見逃せないのは、レオやネルラの叔父・考(岡部たかし)の存在である。
ネルラのもう一人の弟・五守が海難事故で命を落とした際には必死で探し回っていた彼が、レオ誘拐事件の回想には一切登場しない。この“不在”は、物語的にあまりに不自然ではないだろうか。
また、寛はネルラには偽装誘拐の真相について話したものの、考には伏せていた。なぜか? もし考が真相を知れば、布勢に強い復讐心を抱く可能性があるから、と寛が考えた結果かもしれない。伏せられていた孝には別の動機があったのかもしれない。
ネルラが断片的に思い出す“第三者の姿”が、もし考だったとしたら。布勢を殺した真犯人は考であり、ネルラは真相を知らぬまま罪悪感を抱えてきた、という構図も成立する。
そう考えると、考の存在は今後の展開において“鍵”になりうる。これまで寛とネルラが隠してきた「15年前の嘘」が暴かれるときに、彼の立場は大きく変わっていくだろう。
その執着は、恋か正義か?
一方、刑事の黒川(杉野遥亮)がネルラに執着する動機も気になるポイントだ。
彼は3か月前、渋谷での殺人事件を担当したが、逮捕直前に被疑者が自殺してしまい、捜査一課からの左遷をほのめかされていた。手柄を求める彼が15年前の布勢死亡事件を再捜査するのは、出世を目論んでいるのなら自然な流れだが、それ以上に個人的な“執着”が絡んでいるように思えてならない。
黒川はネルラに惹かれている。15年前、パトカーの中で見た彼女の顔を忘れられなかったのかもしれない。正義感と恋心、その境界線は回を追うごとにあいまいになり、やがて「幸太郎×ネルラ×黒川」の三角関係へともつれ込んでいく。第5話ではまだ序章にすぎないが、予告編からも黒川の存在が次第に危うさを帯びていくことが示されていた。
彼は本当に正義のために動いているのか、それともネルラへの愛ゆえに真相に迫っているのか。この二面性が、サスペンスの厚みをさらに増している。
「真犯人は誰なのか?」というサスペンス的興味と同時に、ネルラと幸太郎の関係性、黒川の執着といった人間ドラマの要素も絡み合い、観る者の心を離さない。愛と嘘、正義と執着。第5話は、それらが織りなす迷宮の入口であり、今後の展開を占う大きな転換点となった。
(北村有)
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