
こう着状態を打開せんと、早々にプレゼントタイム。やはりモノはわかりやすい。悩み抜いた渾身の品(色鉛筆、綺麗なカード、カバン、Tシャツ等)を一つずつ取り出すと、それぞれに笑顔を見せてくれたので盛大にホッとする。あ、そうそうと最後にノートと鉛筆も。
その時起きたことを、私は一生忘れないだろう。
何の変哲もない2冊のノートと3本の鉛筆を見たナオミちゃんは今までの百倍くらいの光量でパッと顔を輝かせ、お父さんと顔を見合わせた。「やった!」という声が聞こえてくるようであった。えっ、そうなん? 本当に欲しかったのはこれだったんだ……。
正直、そんな普通すぎるものを贈るのは失礼じゃないかと思っていた。そうじゃなかった。普通のものが彼女には宝物だった。自分の想像力のなさと、今この世界の圧倒的「格差」に愕然とする。
でも私はなんだか羨ましくもあったのだ。近頃こんなに喜んだことってあったっけ? そしてこのノートは超大切に使われ、世界のノート界において最も役立つ存在となろう。人とモノのそれ以上の関係があるだろうか。
※AERA 2025年4月28日号