
「コンビニ百里の道をゆく」は、ローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
* * *
寒さもやっと和らいできて、絶好の行楽シーズンですね。
私はどこかに行くにしても、車よりも鉄道を利用するほうが好きなんです。たぶん、子どもの頃の心地よい記憶が影響していると思います。
幼稚園から大学まで、自宅から歩いて通っていたので、私にとって「電車に乗る」はすなわち、「遠い、知らない町に行く」ということでした。
親に手を引かれて阪急電鉄の最寄りの駅から梅田駅まで出て、百貨店でお子様ランチを食べたり、大きなプールがある施設に電車に乗って連れて行ってもらったり。
当時はまだクーラーがついていない車両も珍しくありませんでした。遠足ではみんなで窓を開け放って、風を顔に思い切り受けながら山に入っていく。そんな光景がいまでも瞼に焼き付いています。
小学校の卒業旅行で、仲の良い友だちと4人で、鍾乳洞で有名な山口県の秋芳洞まで夜行列車で行ったこともありました。いま考えると小学生だけでそんな遠くまでよく行ったなと思いますが(笑)。
混雑した通勤電車、なんて存在を知ったのは、私が社会人として東京に出てきてから。子どもの頃の記憶の影響で、鉄道と聞けば知らない場所に行くワクワクドキドキ感と結びついてしまうんですね。

大人になってからも、家族旅行は車が便利ではあるけれど伊豆半島に行くならやはり「踊り子号」に乗って、ノスタルジックな旅人気分を味わいたくなります。
鉄道の中でもやはり、特急を含めた「在来線」が魅力的だと感じます。北陸に出張に行くとしたら、行きは北陸新幹線でも、帰りはあえて少し在来線を利用したりして、海や山の景色を見ながら、地元の寿司なんかをつまみに地元の日本酒を飲んで。いつの間にかウトウトしているうちに、東京に着いている。私にとって、何とも心地よく、幸せな時間です。
※AERA 2025年3月24日号

