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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、昔のテレビの「おふざけ」が壊したものについて。

【写真】気品とオーラあふれる松嶋菜々子さん

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 最近、私のSNSのタイムラインには、昔のテレビ番組が「ヤバイモノ」として流れてくるようになった。中居正広さんの週刊誌報道の影響だろうか。1990年代の日本のテレビ、そこでは女性を性的にからかうのは当たり前、女性を殴ったり蹴ったりしても許される、そんな恐ろしすぎる世界観が「お笑い」として繰り広げられていた。怖い……でもついつい見入ってしまう。これが「当たり前」に流れていた時代を私がリアルに生きていたという事実、流れてくるほとんどに既視感があることに戦(おのの)きながら。

 私が強烈に覚えているのは、フジテレビの「とんねるずのみなさんのおかげです。」だ。若かったとんねるずのふたりが、その“お行儀の悪さ”を自在に発揮し、お高くとまっていたテレビの常識を乱暴に崩していく様子を、テレビの中の人もテレビの前の人も、みんなで楽しむような番組だった。調べたら、1989年から6年間バラエティー番組として年間平均視聴率1位の大人気番組だったそうだ。

 今、私のタイムラインにはその番組で、松嶋菜々子さんがとんねるずのふたりに性的にからかわれている動画がいくつもあがってきている。芸能人としてテレビに出始めたばかりの松嶋さんは当時、まるで公開処刑のように性的にからかわれ、殴られたりしていた。それはあまりに衝撃的な映像だ。

 こう書きながら急に思い出したのだが、あの頃、一緒に「とんねるずのみなさんのおかげです。」を観ていた男性が、松嶋さんがセックスシーンを思わせる媚態(びたい)で性的なことをとんねるずに言わされているのを観て吹き出したことがあった。私はその時の男性の横顔をはっきりと覚えている。ふだんは“高尚なこと”を言いたがるその男性が、こんなゲスでエロなジョークで笑うのか! という驚きだったが、今思えば、そんなジョークがテレビから流れてくることのほうが驚くべきことだった。

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フジテレビが突出して「女性にひどかった」