パナソニック ビューティ商品部ヘアケア技術開発課:上林真由香さん(かんばやし・まゆか)/1980年生まれ。滋賀県出身。2001年、短期大学卒業後、松下電工に入社しビューティ商品企画課へ。主にドライヤーのモニター調査を担当。03年、ビューティ技術開発課に異動、初代ナノケアドライヤーの開発から携わる。毛髪診断士(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年2月3日号にはパナソニック ビューティ商品部 ヘアケア技術開発課 上林真由香さんが登場した。

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 2025年、パナソニックが誇るヘアドライヤー ナノケアが発売から20年を迎えた。その開発当初から技術者たちと共に切磋拓磨し合い、美しい髪を実現するドライヤー研究を続けてきた。

 入社当時は美容機器のモニター評価が主な仕事だった。2年後に技術開発課に異動。それまで試作品に不具合があったときに訪れるくらいの、自分とは縁遠い部署だった。

 課せられた仕事は、空気清浄機に用いられたナノイー技術を応用した、美髪作用を有するドライヤー開発のためのモニター評価。「記憶がないほど大変でした」と話す。

 1日100パターン以上の試作品を、髪を洗っては乾かす、を繰り返し実使用テストして評価する。

 髪をしっとりさせる技術なのに、なぜかパサパサになったり、しっとりしても別の不具合が出たり。少しでも良い結果が出たら、その方向で試作品を作ってはまた作り直すという、先の見えない苦しい日々が続いた。最初は社内の方々にもモニター協力してもらっていたが、あまりにも毎日良くない仕様が続くので、誰も来てくれなくなった。

 仕方なく、良い仕様が見つかるまで自分の髪だけで試していたら、そのうち自身の髪の毛も指が通らないほどに。

 それでも頑張れたのは、開発チームが諦めることなく、一丸となってゴールを目指したから。モニター評価結果をしっかりと受け止め、商品に反映する信頼に満ちたコミュニケーションで初代ナノケアが完成。当時としては非常に高額な商品であったがヒットにつながった。

「第1弾を買ってくれた人のおかげで、今があります」

 入社25年目。常にアップデートしていく努力を怠らない。毛髪の知識を深めるために、毛髪診断士の資格も取得。

 今では自分でドライヤーを分解して仕様変更をほどこし、評価結果とともに改善要望を伝えることができるまでに。

 艶のある髪に仕上がるだけではなく、髪質の改善にこだわって開発を続けている。

 一番嬉しかったのは、通っている美容院で、「ナノケアを使っているお客様の髪質が良くなって喜んでいる」と言われたこと。

 髪質改善のドライヤーを探求し続け、使ったことがない人にも手にとってもらえるようになることが夢だ。(ライター・米澤伸子)

AERA 2025年2月3日号

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