たしかに人生経験なら、中高年というだけでアドバンテージあり。ただし物覚えとなると、悔しいけど悪化の一途。これで試験、受かります?

「資格を与えるための試験ですから、若い人でも簡単ではない。ただし私の経験では、中高年になると新しいものを受け入れたがらない人が増えてくる。能力以前の問題でモチベーションが低下した結果、覚えられない、理解できないと思い込んでしまうケースも少なくない気がします。そんなときは自分が興味を持てる分野を選べば、覚えの悪さをある程度克服することもできると思います」

 社会人経験が浅く、テキストを丸暗記しなくてはいけない若い世代と比べ、中高年は実体験で得た知識の量も格段に多い。例えば社労士試験では、年次有給休暇の知識など、暗記しなくても解ける問題に出合う可能性は高い。さらにこんな朗報も。

「理解力、洞察力など、過去の経験や学んだことから得た『結晶性』と呼ばれる知能は、加齢による低下が緩やか。80歳になっても20代の能力をキープすることがわかっています」

■始めるならまずITパスポート

 自信を取り戻したところで、中高年にお薦めの資格を教えてもらった。まず、リスキリングで多くの人が目指すジャンルといえば、やはりIT。

「興味のない分野は選ばないほうが効率的だと言いましたが、ITだけは別。どんな種類の仕事とも、毎日の生活とも切っても切り離せない存在になっています。読み・書き・そろばんのようなもので、避けては通れない現代の学びのひとつです」

 IT系のおすすめ資格の一つはITストラテジスト。経営者らにIT戦略のアドバイスなどを行う資格で、情報処理技術者試験という国家試験のうちで最もレベルが高い資格として知られる。

「IT分野にある程度明るく興味のある人が最後の目標とする資格として薦めています。それまでITに関わったことのない人は、入門編とも言えるITパスポートから始めるのがいいでしょう」

次のページ