再選を果たした斎藤元彦兵庫県知事。しかしPR会社社長のネット投稿をきっかけに公職選挙法違反の指摘が相次いだ。知事側の説明には不自然な点が多い。AERA 2024年12月16日号より。
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「承認欲求や自己顕示欲が強すぎると叩かれてますけど、私はそんな悪い印象ないんですよ。20代で起業して、若いのに応対や礼儀もしっかりしてたし、SNSコンサルティングという新しい分野で仕事を広げて、周囲からも一目置かれていました」
起業まもない頃の彼女を知る人がそう擁護する声もあれば、別の知人からの苦言もある。
「インスタグラムやXに上がっている動画を見ればわかる通り、典型的な阪神間富裕層のお嬢様ですよ。SNSを使った広報・PRの会社だから、キラキラ感を前面に出すのもわかるんですけど、ちょっとやりすぎかな」
兵庫県西宮市の広報・PR会社「merchu(メルチュ)」の折田楓社長である。兵庫県知事選をめぐるネット投稿が炎上して以来、報道各社が取材を要請しているが、応答はなく、SNSでも一切語っていない。
11月17日に行われた同知事選では、告発文書問題で県議会の全議員から不信任決議を受けて失職した斎藤元彦氏が当初の劣勢を覆して再選を果たし、「SNSの勝利」と言われた。
その余韻冷めやらぬ同20日、折田氏は〈斎藤陣営で広報全般を任せていただいていた〉として、自身が提案・構築・運用したというSNS戦略やそのコンセプト、運用方法などを詳細にnoteに綴った。
だが、それらの選挙運動を折田氏が主体的・裁量的に行い、報酬を受け取っていれば、公職選挙法上の買収に当たる可能性がある。指摘が相次ぐと、斎藤氏は「公選法に抵触することはしていない」と繰り返し、経緯の説明は代理人弁護士に丸投げした。
斎藤氏と同じ街宣車の上で折田氏が演説の動画配信をしていたことを問われると、「ボランティアとして個人で参加されたと認識している」と述べた。
27日に記者会見を開いた代理人の奥見司弁護士は、折田氏側に支払ったのは、メインビジュアル企画・制作、ポスターやチラシのデザイン制作など5項目の計71万5千円のみで、いずれも法律で認められていると後援会宛ての請求書を示して説明。「SNS戦略を依頼した、広報全般を任せたというのは事実ではない」「(折田氏は話を)盛っている」と述べた。