給料は上がらないし、物価も高い。お金に関する不安や心配は尽きない、というのが多くの「庶民」にとっての実感だろう。ところが、いま日本では「お金持ち」が増えているという。野村総研の2021年の調査では、資産保有額が1億円以上の富裕層・超富裕層は150万世帯弱。人口減の中、この層は右肩上がりなのだ。では、この「富裕層」とは、いったいどんな人たちなのか。AERA10月28日号で特集します。
【写真】お金持ちの五つのタイプで分類すると… 専門家がみる富裕層に近づくキーワードとは
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私たちがまず最初にイメージするのは、代々土地や財産を相続してきた人たちや、古くからの企業経営者などだろう。しかし、「そういったタイプも、まだいるにはいる。でも、大きく資産を増やしてはいません。日本の富裕層の内実はもはや大きく変わり、新しいタイプが増えてきています」と指摘する人がいる。
日本から海外への移住を希望する人をサポートする会社「アエルワールド」を経営する大森健史さん(49)。いきおい相手にするのは富裕層が多く、その数は2万人を超える。
「不動産投資はもちろん、暗号資産や、SNSを駆使した情報ビジネスなどで財を成す人たちが圧倒的に増えています。預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などの『純金融資産保有額』のみを基にした野村総研の富裕層調査ではすくい上げることができない、『シン富裕層』とも言える人たちが中核を成しているのが実態なんです」
大森さんは、現在の日本の富裕層は大きく五つのタイプに分けられるという。
まず、自分の実力で企業を経営してきた「①ビジネスオーナー型」。シン富裕層の中ではやや古いタイプも含む。「②資本投資型」は開業医や一流企業の社員など、世間一般の平均よりも高い給与を元手に、株や不動産、暗号資産などに投資して増やしていくタイプだ。
シン富裕層の典型
そして「シン富裕層」の典型的なタイプとして、「③ネット情報ビジネス型」「④暗号資産ドリーム型」がある。③はインターネットを活用しての株式投資や、さまざまな「ハウツーもの」を動画にまとめた「情報商材」を売ったり、ユーチューブなどの動画配信で稼ぐタイプ。④はビットコインなどの暗号資産で数億円から数百億円規模の資産を得た人たちだ。
「こういった変化にともない、私の会社の顧客層で言えば昔は60代がボリュームゾーンでしたが、いまの富裕層は40代がメイン、続いて30代と50代、そして20代後半の人も出てきたという印象です」
では、なぜ「新しい富裕層」なる存在が生まれてきているのか。大森さんは時代の流れの中で「三つの重要なタイミングがあった」と指摘する。
一つ目は、2000年頃からのインターネットの発達、そして2010年頃からのスマホの普及だ。このことで「誰もが投資やビジネスに取り組みやすくなった」と大森さんは言う。