タラの漁場で獲れるから 「タラバ」 ガニ。脚がもう一組あっ「“たらば” カニ」、の 「タラバ」 ではありません。
ある人は以前から、タラバガニはカニではなく、ヤドカリの仲間であることは知っていました。しかし、「タラバ」の意味が「タラの漁場(鱈場・たらば)」であるとは知らず、ずっと、脚がもう1組「あっ“たらば”」カニ、という意味で、「タラバガニ」だと信じていたそうでうす。「タラバ」という言葉を、そんな意味でとらえる人なんて、日本全国、この人だけだと思いますが…。
実際のタラバガニは、鱈場にいるとはいえ、エビやヒトデ、ゴカイ、死んだ魚などをエサとしています。大人になるまで10年。寿命はおよそ30年と、けっこうな長生きです。
プロレタリア文学の傑作「蟹工船」(小林多喜二著)では、大正時代、タラバガニの缶詰を船上で作るカニ漁の過酷さが描かれましたが、そのころはタラバガニも豊富に生息していたようです。しかし、乱獲により生息数が激減し、今では日本とロシアで協定が結ばれ、カニ漁は規制がなさかれています。
花咲(はなさき)ガニもヤドカリの仲間。タラバガニとよく似たアブラガ二もヤドカリ。
花咲ガニは北海道の根室周辺でしかとれない、珍しいカニですが、これもヤドカリの仲間です。全体像を見るとわかるように、脚が4組しかありません。わりと大型で身入りがよく、甘みがあり、濃厚な味わいです。花咲ガニも4月下旬から産卵期に入ります。釧路では3月中旬~7月いっぱいにかけて、根室では7月~9月にかけて漁獲されますが、旬は7月から。漁獲量が少ないので、「幻のカニ」とも言われます。
また、タラバガニによく似たアブラガニも、ヤドカリの仲間です。かつては、アブラガニをタラバガニと偽装して販売するのが問題になりましたが、アブラガニの味は、むしろタラバガニよりもおいしいという人がいるくらいのおいしさです。アブラガニとタラバガニを見分けるのは素人では難しいようですが、甲羅やツメのトゲが違うなど、よく見れば明らかに違うそうです。
北海道で食べるカニといえば、大きな脚のタラバガニと、ミソもおいしい毛ガニが代表的です。毛ガニは5番目の脚もしっかり見える、正真正銘のカニですが、タラバガニは名前に「カニ」がついているのに、ヤドカリの仲間だったとは…。とはいえ、タラバガニの脚に豪快にかぶりつくのは、大きな脚だからこそできる楽しみです。カニだろうがヤドカリだろうが、おいしいものはおいしい!!
4月に入り、北国もようやく春めいてきました。タラバガニの産卵も始まりました。函館の桜の開花予想は4月23日、稚内や根室は5月上旬です。4月下旬以降の北海道は、桜が咲き、タラバガニがおいしい季節です。おいしいタラバガニが待つ北海道で、遅い春を楽しんでみませんか。