まず列車のスピードが速くなって、乗車時間が短くなったのは大きいと思います。新幹線が、お土産を買ったり駅弁を食べたりする“楽しみ”の場から、ただの移動手段になってしまった。パソコンやスマホが普及すると、車内で仕事をしたり、イヤホンをつけて動画を見たりしているお客さまが増えて、販売員が声をかけづらいムードになってしまいました。そして、コロナ禍です。車内の雰囲気が一気に静かになって、販売員の仕事の厳しさには拍車がかかったと思います。

――デジタル技術の進歩に伴い、新幹線に限らず、販売員という職業は失われるのでしょうか?

 というより、スキルを磨いた人とそうでない人の二極化が進んで、機械にとって代わられない販売員だけが生き残ると思います。それには、仕事を上手にこなす能力はもちろん、「あなたにお願いしたい」と応援してもらえる魅力も必要になるでしょう。

 コロナ禍にあっても、お客さんといい付き合いをしていたからつぶれなかったお店がありますよね。モノだけじゃなくて、お店の人のやる気とか愛情みたいなものも買えたから、人が離れなかった。やっぱりどんな仕事でも、これからは、「自分という人間がやるからこその価値」をどこまで出せるかが、勝負になるのかもしれません。

(聞き手・構成/AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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