コロナ前 早朝の羽田空港(朝日新聞出版)
コロナ前 早朝の羽田空港(朝日新聞出版)

 だけど人間は忘れっぽいから、一時的にバーッと注目を集めても、またすぐに元に戻ってしまうんです。生まれた変化を長く持続するには、常に動いてないといけない。

 そう思って始めたチャレンジのひとつに、ハウスクリーニング事業があります。うちはビルメンテナンスの会社なので、ハウスクリーニングはやっていなかったんですね。実はそのころ、私の働き方に変化がありました。現場に出れなくなっていたんです。理由は、テレビに出演したあと、私を探しにくる人がいっぱいいて、作業がしにくくなったこと、加えて、管理職になったので、空港の現場に出ることができなくなったことです。

 以前なら、急に欠員が出たら自分が行って埋めましたが――今でもいざとなれば行くと思いますが――、スタッフの人数もそろってきたし、もう私が行く必要はない。そうなったときに、「だったらハウスクリーニングをやろう」と思いました。その新しい仕事なら、私が技術者として現場に入っても問題ないですから。

 わがままで言ってるんじゃないですよ。清掃の仕事は、現場を離れるとあっというまについていけなくなります。道具も洗剤類も常に進化しているし、床やテーブルの材質だって毎年変わります。

 新しい現場に入ったときになんにもわからなかったら、どうして技術者と言えますか? 私がなんにもやってなくて、ただ座っているだけだったら、これまで私がみんなに教えたこと、この本に書いたことの価値が変わりませんか?

 自分自身をどんどん更新しなければ、せっかくこれまでやってきたことが、そこで終わってしまうと思うんです。

 常に初心を忘れずに、なおかつ新しいものを見つける。座っていては、なにも見つからないんですよ。だって頭で考えることと、実際に経験することは違うんですから。現実を見ないでどうやって考えるの?

 だから、現場を手離してはダメなんです。

 この8年のあいだ、いろんなことをやってきましたが、同じ業界の人たちが喜んでくれて、「新津さんのおかげで、私たち仕事しやすくなってきました」と言ってくれます。そういう言葉を聞くと「やってよかったな」と思うし、だったらまた新しいことをやろうという気持ちがわいてくる。そうやって常にアンテナを立てているんです。

暮らしとモノ班 for promotion
大人も夢中!2024年アニメで話題になった作品を原作マンガでチェック
次のページ
どうしよう、どうしよう、と言ってても、誰も助けてくれない