パリ到着から難航

 先方から示された取材予定もザックリしたもので、「1日目:到着→ホテル」「2日目:取材」「3日目:フランス出国」程度の情報しか伝わっていなかった。

 世界各国から記者が招かれていたが、日本から筆者も含めて3人。シャルル・ド・ゴール空港で合流する予定だったが、顔も知らない3人が出会えるはずもない。

 ひとりとはうまく会えたものの、「もうひとりはどこ?」「ホテルまでの車は?」と、筆者の脳内では映画のテーマ曲『Theme From Mission: Impossible』がエンドレスで流れ続ける状況だった。

 実は、日本から来たもう1人の記者は、すでに迎えに来た車に乗り、先にホテルに向かってしまっていたのだった。
 

 翌日は取材日。全世界から記者が集い、それぞれに与えられた時間は15分間。

 取材場所はパリの中心地、1区にある老舗高級ホテル「オテル・リッツ」だった。

 ホテルの中庭に面した広い部屋に通されると、ソファーに優美に座るエマニュエル・ベアールがいた。
 

見惚れるほどの美しさの大女優

 画面の中でしか知らない女優を、リアルで見たときの「あるある」ではあるが、思っていた以上に小柄で驚いた。

 記者が部屋に入ってきても、彼女は中庭のほうへ視線を向けている。通訳の女性を介して挨拶しても、微笑みを返すだけ。あとは気だるい雰囲気を醸し出し、大女優の風格だった。

 当然のことながら、受ける質問は映画『ミッション:インポッシブル』のことばかりだから、彼女もきっと退屈だったことだろう。質問に淡々と答えていた。
 

 質問に変化球をと思い、当時妊娠中だった彼女に、そのことについて聞いてみた。すると、通訳の女性が鬼の形相に変わり、エマニュエル・ベアールに通訳をせずに記者に向かって説教が始まった。

「そんな質問に答える必要があるのでしょうか? お腹の中の子どもは彼女の子どもであって、誰の子だとか関係ない。そんなこと、そもそもあなたには関係のない話です。誰と結婚するとか、それ以前に結婚することそのものも他人には関係のない話で……(説教は続く)」

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取材はあっという間に終了