冷や水を浴びせるようなことを言ってくる野暮天もいるが、片想いでもいいのです。私が好きなんだということは鰹もわかってくれてるとは思うのだけど、決して鰹からの見返りは求めない。鰹は「みんなの鰹」なのだから。たまーにオレのそばに居てくれればそれで十分だ。

 あっという間に一人でふた皿は平らげてしまった。好きだからねー、仕方ない。

 翌日、私以外の打ち上げ出席者全員が腹を下した。熱が出て2、3日動けなかった者もいたそうだが、私だけなんともなかった。

 原因は鰹ではないかと弟弟子が言った。全員が口にしたナマモノは鰹のたたき以外はなかったそうだ。悲しくなった。オレの鰹が……容疑者なのか。

「オレが注文して、オレが一番たくさん食べて、オレがあたってないのに、どうしてオレの大好きな鰹が嫌疑をかけられなければならないんだよ!(怒)」

「………いや、兄さんはお身体がご丈夫でらっしゃいますから……」

「お身体」? 「ご丈夫」? 「らっしゃいます」? こいつ普段そんな言い方したことねぇし、明らかに丈夫であることに羨ましさが込められていない口ぶり。

「そもそも、口に運んだ時になんか嫌な予感はしたんですよね」

「どういうことだよ!?」

「なんか、ヤバそうな臭いがするというか……あくまでも結果論ですけど」

「だからみんなあんまり食べなかったのか?」

「いや、他の人はどうだかわからないですけど少なくとも私はそうでした。1枚だけにしておいたんですけど……きましたね、ガツンと」

「鰹で確定なのか? みんなそう言ってるのか!?」

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無理しなくていいんだよ、鰹