※写真はイメージです(gettyimages)

どれだけ気心の知れた友人であっても、時には同意できないこともあるでしょう。そんなときは素直に「それは違うと思う」と伝えるべきなのか、「なるほど」を受け流すべきなのか。適切な友情を育むために必要な心構えとはどういったものなのでしょう。

本稿は、哲学者のピーター・ボゴジアン氏と文筆家・批評家のジェームズ・リンゼイ氏の共著『話が通じない相手と話をする方法――哲学者が教える不可能を可能にする対話術』より、一部抜粋・再構成のうえお届けします。

有意義な人間関係を築くための要素とは?

 よい人間関係は、健康と幸福をもたらす。他の何よりも──正しくあることによっては決して手に入らないほどの健康と幸福だ。死期が迫っている人が善き人生のための重要な要素として頻繁に挙げるのもこの2つだ。

 健全な人間関係の基礎としては、正しくあること、あるいは互いの考えに同意していることだけでは、全く不十分である。有意義な人間関係を築き維持できるかの成否を左右するのは、多くの場合、次のような要素である。

 信頼性、親切心、美徳、共感、よい会話、互いに思いやりと善意を持つこと、誠実性、関心の共有、そして関係を価値あるものと考えること、こういった要素である。

 これらの重要な要素のほとんどは、政治観や宗教観とは関係がなく、そのことは何十世紀にもわたる人類の歴史が証明してきた。友情や家族という関係のもとではそういう対立の大部分は脇に置いておくことができるのだ。

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