コンビニエンスストアやスーパーなどのレジ横に設置されている「緑の募金」の箱は、多くの人が目にしたことがあるに違いない。1950年から続くこの活動は、SDGsの理念が高まる昨今では特に注目されており、個人だけでなく企業からの支援も大きな支えになっているという。「緑の募金」を管理する国土緑化推進機構に、活動について話を聞いた。

森林づくり活動を支援。
次世代の緑化を担う人材の育成なども

 国土緑化推進機構は、国土の緑化を推し進めるために設立された公益社団法人で、農林水産省林野庁の指導を受ける。1950年に前身が発足して以来、幅広い活動を展開。全国植樹祭・育樹祭の開催、全国緑化キャンペーンの推進、みどりの日・月間の行事開催、森林ボランティアの育成、緑の少年団活動への支援、緑化功労者などの表彰、森林NGO活動への支援、調査研究などを実施している。

 なかでも力を入れているのが、「緑の募金」だ。森林や緑を豊かにするため、誰もが自分に合った形で参加できる社会貢献の方法。集まった募金で、NPOや市民団体などによる森づくり活動を支援している。そのほか、地震や豪雨といった自然災害の被災地域復旧支援に応じた緑化活動、国内・海外の森林・里山の保全、緑化の推進、資源の循環的な利用、次世代の森づくり人材の育成などにも役立てている。

 国土緑化推進機構の常務理事を務める瀬戸宣久さんは、次のように説明する。

「どのような事業に支援するかは、毎年1回、全国の民間ボランティア団体やNPO法人などが実施する森林づくりの事業に対して応募を募り、第三者委員も交えて審査します。審査を通過した団体が対象となり、2023年度(2023年7月~2024年6月)国土緑化推進機構の公募事業としては151件の事業を支援しています」

地域住民やボランティアによる活動のほか、子どもたちの体験学習も行っている

個人からの募金は減少傾向に。
高まる企業への期待

 「緑の募金」は、町内会や自治会を通じて各家庭からいただく「家庭募金」を筆頭に、「街頭募金」「職場募金」「企業募金」「学校募金」などの方法を用意し、少しでも多くの個人や企業が参加しやすくしているという。2023年の募金額は、都道府県緑化推進委員会の実施分も含めて全国で約20億円だった。内訳の割合は、家庭募金が49%、企業募金が25%、それに職場募金9%、学校募金4%、街頭募金1%、その他12%と続く。

「近年、人口の減少や近所付き合いの希薄化などにより町内会といった地域のコミュニティーが衰退しつつあるため、家庭募金は減少傾向にあります。企業募金も、全体の4分の1にとどまっているのが現状。そこで私たちは、ぜひ企業の積極的な参画を呼びかけたいのです」と瀬戸常務理事は力を込める。大口の寄付をした企業からは、社会貢献のコンセプトに対応した支援の分野について希望を聞くこともあるそうだ。「森づくりを担う人材育成に使ってほしい」「スギ等の森林の有効活用に支援したい」など具体的な希望があれば、できるだけそれに沿う形での支援が実現する。

海外の森林荒廃が進む地域では、環境改善を目指し植樹や地域への普及啓発も

レジ横募金、寄付金付き商品、ポイント募金付きクレカ

 企業が参画する方法は、さまざまあるという。企業の運営する店舗のレジ横に募金箱を設置する方法が真っ先に浮かぶが、それだけではない。例えば、販売価格の一部が募金に充てられる「寄付金付き商品」は、食品、衣料品、家電製品、出版物、日用品などで各企業がアレンジしている。利用ポイントの一部が募金となる企業独自の「クレジットカード」も注目されている。そのほか、銀行などが提携するスマホ決済アプリからの寄付、アイスクリームの木さじや、テイクアウトメニューのカトラリーを有料化して売上金を寄付するといった食品メーカーや飲食系企業もある。

「企業の販売活動と連携した募金を、私たちは『協賛募金』と呼んでいます。協賛募金に関連した商品は販売活動のPRに一役買っているだけでなく、環境問題に意識の高い消費者の支持も高いため、企業のイメージアップにもつながるでしょう。2023年の例として、協賛募金の協力企業は89社で、3300万円ほどが寄付されました。現在、さまざまな企業から、『寄付をして緑化に貢献したいが、どのような方法がありますか?』といった相談も増えています。私たちも経験が豊富にあるので、その企業の提供する商品にからめた募金方法を展開することが可能です」(瀬戸常務理事)

百貨店、コーヒーチェーン、出版、通信、タイヤ、化粧品、音響機器など、あらゆる業種の企業が協賛活動に参画

東京ガス、ダイドードリンコも参画。
その支援方法とは

 ここで、特に消費者から反響の多い事例を紹介したい。

事例1:東京ガス「さすてな電気」

 CO2排出量が実質ゼロの実質再生可能エネルギーを利用できる、料金プラン。すでに環境に配慮された商品だが、加えて特徴的なのは、新規契約1件につき千円が「緑の募金」に寄付されること。植林や森林保護に貢献するという付加価値を付け、環境意識の高い家庭から人気がある。

東京ガスは森づくり活動にも積極的に取り組む。写真は千葉県・蓮沼海岸での植林の様子

事例2:ダイドードリンコ「緑の募金寄付型自動販売機」

 自動販売機での売り上げの一部が、「緑の募金」に充てられる。ドリンクを1本販売するだけで社会貢献できるうえ、設置先や消費者にまで緑化の思いが伝わる取り組み。設置先にとってはSDGs達成に向けて取り組みやすい仕組みであり、ダイドードリンコにとっても自動販売機の設置拡大につながる、両者のメリットは大きい。2021年には20周年を迎え、設置数は3千台超となり、その後も全国的に広く展開している。

「緑の募金」対応の自販機は、前面に活動紹介の表示がある

「緑の募金」で脱炭素、循環型社会の実現を目指す

 現在、あらゆる企業が環境問題に取り組み、SDGsに貢献したいと思っているだろう。瀬戸常務理事は、そんな企業の参画を期待している。

「SDGsで提唱されている17の目標の中でも、『陸の豊さも守ろう』は『緑の募金』活動に直結していますし、その活動は『気候変動に具体的な対策を』にも大きく貢献します。SDGsに貢献したいと考えているなら、『緑の募金』を活用してください。脱炭素、循環型社会の実現に向かって、それぞれできる努力をすることが求められている今こそ、企業の力が必要です。ぜひ、私たちと協力して緑豊かな環境づくりの実現を目指しましょう」