キユーピー研究開発本部 技術ソリューション研究所 機能素材研究部チームリーダー 児玉大介(こだま・だいすけ)/1983年生まれ。2008年、名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻修士課程を修了。入社後は工場に配属。11年から研究所で基礎研究や商品開発、15年から経営企画に携り、21年から現職(撮影/加藤夏子)

 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年1月29日号にはキユーピー 研究開発本部 技術ソリューション研究所 機能素材研究部 チームリーダー 児玉大介さんが登場した。

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 マヨネーズで知られるキユーピーは、年間約42億個の卵を使って様々な商品を発売している。より多くの人たちに卵をおいしく食べてもらおうと、同社は2013年にアレルギー低減卵の基礎研究を始めた。その研究リーダーを務める。

 大学では、鶏の遺伝子工学を研究した。日々、鶏や卵と触れ合う中で、卵の奥深さの虜になった。

 卵は捨てるところが一つもなく、同社では100パーセント有効利用している。黄身はマヨネーズに、卵白は菓子や蒲鉾、膜は化粧品やサプリメントなどに利用。年間2万8千トン出る殻は肥料、タイヤの滑り止め、壁などの建築資材になる。また、殻はカルシウムを多く含むため、お米に混ぜて一緒に炊く商品も発売している。卵に含まれる、知られざるタンパク質の研究も内容の一つだ。現在、東京農業大学の同社の寄付研究部門にも参画、卵の本質研究に携わっている。

「15年間、卵一筋ですが、まだ未知なる素材で、知りたいことだらけです」

 研究だけではなく、09年から青森工場で生産管理に従事した。1日約70万個の卵を扱う現場だ。

 昔、鶏は木の上で生活していて、巣から卵が落ちないように、あえて、あの卵形に産んでいる。工場のメンバーに機会があるたびに、卵に関する話をした。一つひとつの卵を大切に扱ってもらいたかったからだ。

 生産性が改善された工場はグループ内で一番の収支改善を達成。収支改善プロジェクトチームに参加し他工場の収支改善も牽引、プロジェクトで社長賞を受賞した。

 卵の基礎研究、商品開発、経営企画と与えられた場所で成果を出すという仕事の本質を学び、やりがいを感じた。

 工場見学に来る子どもたちや得意先、消費者に卵の魅力と価値を正しく伝えたくて、「五ツ星タマリエ」の資格も取得している。

 鳥インフルエンザ問題で卵の値段が一時高騰したが、今は少し落ち着いてきている。消費者には、これまで以上に卵の価値を理解してほしいと願う。

 アレルギー低減卵の研究は、応用研究のフェーズにまできた。

「私にとって卵は、飽きることのない研究対象です」

(ライター・米澤伸子)

AERA 2024年1月29日号