脚本・演出家として様々な話題作を手掛ける宮藤官九郎と歌舞伎俳優として数々の舞台や映像作品にも出演する中村七之助。2人がタッグを組んだシネマ歌舞伎の最新作「唐茄子屋」から、話題は歌舞伎の歴史につながる。AERA2024年1月15日号より。
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──シネマ歌舞伎は、歌舞伎の舞台公演を高性能カメラで撮影し、スクリーンで上映する。「唐茄子屋」をはじめ、過去の名作を劇場で観ることができる。
宮藤:2010年に「大江戸りびんぐでっど」でシネマ歌舞伎をやらせてもらった時、初めて映像を直視して「こんなに面白かったんだ」と思いました(笑)。その前に「野田版 鼠小僧」を観に行ったこともありました。まず、もう見ることのできない作品を大画面で観られるのはいいですね。そして、シネマ歌舞伎は舞台の歌舞伎でも映画でもなくて別ものだなと思いました。
七之助:最初は、シネマ歌舞伎があると、歌舞伎に足を運ぶ人が減るという懸念もあったそうですが、逆でした。シネマ歌舞伎を機に歌舞伎を好きになってくださった方も多いからこそ、20年近く続いています。
──ふたりがタッグを組んだシネマ歌舞伎の最新作「唐茄子屋」は、古典落語をベースに時事ネタを盛り込んだ。伝統の中に革新性がある。
宮藤:中村勘三郎さんから「昔は殺人事件が起きた翌日や翌々日には歌舞伎になっているぐらいのスピード感があった」と聞いたことがあり、「歌舞伎には今のネタを入れなきゃ」と思っているのかもしれません。映像だと「コンテンツとしてずっと残すので時事ネタは避けてほしい」と言われることもあって、舞台は自由にやりたいと思っています。
七之助:宮藤さんの作品は今を生きている作品で、反骨精神が感じられます。歌舞伎や落語も世の中の堅苦しい定義に対して、「何言ってんだよ!」と突っ込むようなところがあるので、通じるものがありますよね。