元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
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プチ海外生活にトライする楽しみの一つが現地のファッション観察。いやね、若い頃はパリなんぞに行けば全員がモデルのように見え圧倒されてひたすら小さくなっていたんだが、最近ではトシのせいか実に冷静である。そして冷静な目で見れば、オシャレに上下関係などないと気づく。何しろ所変われば「そもそもオシャレって何」という定義そのものがまるきり変わるのだ。
先ごろ行ったポートランドでは、人生初アメリカだったのでアメリカ人のファッションを初めて見たんだが、これまた衝撃的であった。あまりに「テキトー」なんである。夏となれば、その辺のジーンズを適当にハサミで切った短パンに、これまたその辺のタンクトップかTシャツってのを年齢に関係なく圧倒的多数が超愛用。ヨガやランニングウェアを普段着にする人もよく見た。ブラトップにスパッツでお腹も体の線も出まくりだが、腹が出ていようが肉がはみ出ていようがお構いなし。
聞いたところによると、雨が多い当地では夏の日差しが何よりの楽しみで、それをとことん浴びて動き回ることが最優先であるらしい。私ってイケてるとか人からどう見られるかってことより何より、自分がどう快適に過ごしたいか、なのだ。故に、どう見ても全然お金かけてない。流行もこれっぽっちも関係ナシ。