生徒への性加害が発覚したことで、学習塾の「安全」が大きく揺らいでいる。防犯カメラの設置など、「密室」を避ける対策だけで十分といえるのか。AERA 2023年9月11日号より。
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塾の補講を受ける生徒を待ち構えていたのは、講師ではなく性加害者だった。
教え子の女子児童(9)にわいせつな言葉を口にさせ、その様子を撮影したとして進学塾大手「四谷大塚」元講師の森崇翔(そうしょう)容疑者(24)が逮捕された。森容疑者は今年5月ごろ、授業のない日に「指導」の名目で生徒を教室に呼び出し、
「勉強しないとお仕置きする」
と脅し、わいせつな言葉を口にさせた。生徒は床に体育座りをさせられ、下着が見える状態だったという。森容疑者はその様子を撮影した疑いが持たれている。
森容疑者はこうした行為について、複数人が閲覧するSNSのチャットグループに投稿し、
〈どうせ撮影するなら、普段通りの短パンで来て欲しいですね〉
〈押し倒してレイプしちゃうかもしれません〉
などと記していたことも報じられている。被害生徒は他にも複数おり、自宅の住所や通っている小学校名などの個人情報が送信されていたこともわかった。森容疑者は、事件発覚後に懲戒解雇されている。
「家庭が信頼して我が子を長時間預けているのをいいことに、今回の事件はとりわけ悪質です」
そう話すのは、数年前に娘が四谷大塚に通っていたという女性だ。通塾時に性加害を見聞きしたことはないが、事件を聞き、そのひどさに衝撃を受けた。
「四谷大塚は私が子どもの頃から中学受験塾の代名詞のような存在です。授業のない日も登校できるというのは本来いいこと。絶対に許すことはできません」
事件を受け、四谷大塚は全教室にカメラを設置し、保護者がリアルタイムで確認できる「ライブモニタリングシステム」を導入すると発表。また、講師の採用にあたっては、心理テストや性格テストを活用するとしている。ほかの大手学習塾でも、すでに教室に防犯カメラを設置するなど「密室」を避けるよう工夫する。