「次も近いので、開き直って、淡々と指したいと思います」(佐々木)

 将棋界の歳時記では、王位戦七番勝負は盛夏を過ぎる頃に佳境を迎えることが多い。第5局は8月22・23日、徳島市でおこなわれる。

「弟子よ、良く頑張った」

 現地で弟子の健闘を見届けた師匠の深浦康市九段は、ネット上でそうつぶやいた。

 1996年。深浦は初のタイトル戦で、全七冠を占める絶対王者・羽生善治王位(当時)に挑んだ。このとき深浦は24歳、羽生は25歳。並行しておこなわれていた棋聖戦では、22歳の三浦弘行が羽生から棋聖を奪い、七冠の一角を崩した。一方で深浦は羽生の堅塁を抜けず、1勝4敗で敗退。しかしここであげた1勝は未来につながったか、のちに深浦は羽生を破って王位に就いた。

 佐々木は棋聖戦五番勝負同様、王位戦でも藤井に1勝をあげ、すでに爪痕は残している。もちろんまだ、王位獲得の望みも捨ててはいないだろう。

 七番勝負で3連敗から4連勝した例は、現代将棋史上2度存在する。そのうちの1度は2009年、深浦王位(当時)が木村一基挑戦者を相手に達成したものだ。

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