特設サイトの画面。3月31日時点ではまだCOMING SOONの文字があるだけだ
特設サイトの画面。3月31日時点ではまだCOMING SOONの文字があるだけだ
この記事の写真をすべて見る

 サイボーグ技術が発展・普及した近未来の世界を描いたSFアニメ作品『攻殻機動隊』の新作が、神戸市とタイアップして製作されることが3月17日に発表された。

 『攻殻機動隊』は、「公安9課(通称:攻殻機動隊)」と呼ばれる組織の活躍を描いた物語。多くの人間が脳を通じて直接インターネットにアクセスできる、高度に“電脳”化した近未来の日本が舞台で、「公安9課」はこうした“電脳”犯罪やテロを未然に防ぐ役割を担っている。この「公安9課」の本部が設置されているのが「ニューポートシティ」で、神戸市が背景のモデルに描かれている。

 今回、『攻殻機動隊』が新たに劇場作品と、テレビ新シリーズが公開されることから、こうしたサイバーな世界観と、神戸市とが公式にコラボレーションを行うことになった。このコラボは「『神戸市 × 攻殻機動隊 新劇場版』公民連携PRプロジェクト」と名付けられ、4月以降順次、その詳細が明らかになる予定だ。

 神戸市のような地方自治体とアニメ作品とのタイアップは、実は今回が初めてのことではない。今回のプロジェクトで神戸市は、『攻殻機動隊』のアニメ制作にあたって“フィルムコミッション”と呼ばれる積極的なロケ地提供の協力を行っている。ドラマやアニメの舞台提供に前向きに協力することで、その作品を観たファンを舞台探訪として観光に訪れさせる狙いがある。アニメ作品だけでも、長野県上田市の『サマーウォーズ』や、東京都立川市の『とある科学の超電磁砲』などの先例がある。

 だが、神戸市の取り組みは観光だけに留まらない。神戸市ではこのプロジェクトを「シティプロモーション」の一環に位置づけており、「IT関連産業の振興」や「オープンデータ・ビッグデータの利活用」にも注力していくとしている。つまり、『攻殻機動隊』という近未来的な世界を描いた作品を通じて、IT先進都市としての神戸市の政策をPRしていきたい狙いがある。観光客だけでなく、IT系企業などのビジネスの場を誘致していきたい考えだ。

 神戸市の広報は「観光に留まらない、シティプロモーションとしての施策を打ち出したのは神戸市が初めて。『攻殻機動隊』の世界観を通じて、ITを重視した政策を訴えていきたい」と、抱負を語っている。

 アニメ作品がその舞台に観光客を呼ぶことは「アニメ聖地巡礼」とも言われ、現在では多くの自治体がその効果に注目している。これが、ビジネスチャンスまで呼ぶ“きっかけ”にもなるのであれば、今後ますますアニメに対する見方は変わってくることだろう。

(ライター/「アニメ聖地巡礼」研究者・河嶌太郎)

[AERA最新号はこちら]