現代バレエの作品上演は大きな挑戦だった。それでもトップダンサーのオリガさんは一日も休まず稽古し、ものにした。
「戦争で国の文化予算は限られる。どの芸術がそれを受け取れるかという競争も国内ではあります」
新しいレパートリーに挑戦するのも、バレエ団員100人余りが未来を切り拓くためだ。
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ロシアバレエとの関係を断ち、独自の道を歩み始めたウクライナのバレエ。
筆者は昨年末、ウクライナ国立歌劇場を訪ねた。その入り口付近の壁に、戦死した男性バレエダンサー、シャポワルさんの写真が飾ってあった。彼と踊ったことのあるバレリーナは「私の夫も戦死しました。私たちが踊るのは、市民が踊りを見て元気になってほしいから。そうでなければ、前線の兵士も戦えません。バレエダンサーも芸術という『前線』で戦っているのです」
こうしたウクライナのバレエダンサーたちを、日本のバレエファンは、昨年来、義援金を送って励ましてきた。寺田監督が手掛ける新制作の「スプリング・アンド・フォール」上演にも、その義援金が生かされている。昨年夏には、ロシアの本格侵攻で世界に離散したウクライナ人バレエダンサーを日本に招き、侵攻後では世界で初めてとなる同バレエ団の海外での公演を実現させた。

その公演を招聘した光藍社(本社・東京)に対し、オリガさんは、足の不調で自身の出演は断念したものの、「ウクライナ人ダンサーが『職を失う』と恐れていた時に、バレエの価値を思い起こさせてくれました」と言う。今夏の公演では日本への感謝の気持ちを表したいと、オリガさんは話す。
全国公演は、「スペシャル・セレクション2023」が14都市で7月21日から。東京での公演は8月4、5日「Thanks Gala 2023」、8月6日「親子で楽しむ夏休みバレエまつり」。詳細は、光藍社(https://www.koransha.com/)。