特に悩みがなくてもネガティブな気持ちになる日は誰にでもあるものだ。早稲田大学スポーツ科学学術院教授で精神科医の西多昌規さんは、「漠然と生きている気がしたり、将来が不安になることは誰もが人生で経験すること」という。西多さん監修の『やめてもいいこと86 心の疲れをとる事典』(朝日新聞出版)から、ネガティブな気持ちに寄り添うアドバイスを紹介する。
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「漠然と生きている」と感じるのは、決して特別なことではなく、誰もが人生で経験することです。例えば、仕事は毎日同じことの繰り返しで、出会いもなければ、面白いこともない。かといって、そんな日常を変えるほどの元気もなく、夢もなく、ぼんやり時間だけが過ぎていく……。ついネガティブに捉えがちですが、そういう自覚のあるときは、現状に満足できずに不安感が強くなっているのです。
原因として考えられるのは3つ。まずは、「この生活を続けていても、この先何も変わらないのではないか?」という『自己向上感の欠如』、次に「自分が社会の役に立っていないのではないか?」という『社会的貢献度の低さ』、そしてもう一つは、毎日忙しすぎて生きている実感が持てない『過重労働』です。
しかし、必ずしも漠然と生きていることが悪いわけではありません。成長していなくても、社会の役に立っていなくても、生きているということだけでもすばらしいのです。ただ、「わかっているけど漠然と生きていることに焦りを感じツラい」ということであれば、どのような状況であれば自分は満足することができるのか少しずつ考えてみましょう。
■将来のことを考えて不安になる
新型コロナウイルス感染症の流行は、世界中に大きな衝撃を与えました。「まさか、こんなことが?」と誰もが思ったことでしょう。未知のウイルスによって日常生活が一変し、マスクを手放せない日がくるなんて想像もしていませんでした。
しかし、コロナ禍で明らかになったように、「将来」や「未来」というのは、本来想像がつかないものなのです。将来のことを考えて不安になるのは、特別なことではありません。ただ、人間が不安になるときというのは、おおよそ「一人でいて」「ヒマだから」です。