米大統領経験者として初めて起訴され、裁判所で34の罪状を全て否認したドナルド・トランプ氏。そんな彼が支持者に向けて発信するメールの内容は、今も現職であるかのようだ。AERA 2023年5月15日号の記事を紹介する。
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「(起訴について)驚きはないに等しい。(ニューヨーク・マンハッタン地区検察の)ブラッグ検事の法的論拠が、思ったよりも弱いという驚愕(きょうがく)を除いては」
今年4月4日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の社説は、こう始まる。WSJは報道機関なのに「トランプを擁護する味方なのか?」と話題になった。
しかし、WSJの指摘は、ドナルド・トランプ前米大統領を有罪にするための裁判がいかに厳しいものかを指摘していた。
トランプ氏は3月30日、34もの「重罪」に問われて起訴された。同氏が4月4日、裁判所で罪状認否をした際、公開された起訴状で明らかになった。34件とも、16年大統領選の最中、不倫関係にあった元人気ポルノ女優に口止め料を支払い、それを事業費として計上したことに関係している。英BBCは、事業記録の改ざんだけでは軽罪だが、ほかの犯罪の隠蔽(いんぺい)に利用したことが重罪の扱いになったと解説する。
これに対し、WSJの社説は、ほかの犯罪につながったとする根拠が弱いとして、アルビン・ブラッグ検事を批判したのだ。
起訴の立役者であるブラッグ検事は、こう説明する。
「この事件は、多くのホワイトカラー事件と同様に疑惑に満ちている」
「誰かが自分の利益を守るために何度も何度も嘘(うそ)をつき、私たちの誰にも適用される法律から逃れようとしているという、疑惑に満ちている」
婉曲(えんきょく)的な物言いながら、彼はトランプ氏の嘘の上塗りを違法として有罪に持ち込みたい意向だ。BBCは「有罪となれば、刑務所で服役する可能性がある」と指摘する。法定刑は1件につき最長で禁錮4年。一方で、初犯なら実刑にならない可能性もあるという。