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 テクノロジーが先か、ニーズが先か。

 新たな技術による新商品を考える場合、この命題はいつも付きまとう。「最先端の技術ならこんなことができる!」と言っても、それが求められているかどうかは全く別の話だ。中には鳴りもの入りで登場した新技術が全く日の目を見ないこともある。昨今の例で言うと3D TVがそれだ。

 3D TVは2009年に発売が開始され、10年頃には大手家電量販店のAVコーナーで大々的に展示されていた。特に“3Dメガネなし”の3D TVを東芝が発売した際には「これで3D TVの障害はなくなった」という人もいた。3Dメガネが必須の3D TVでは、わざわざメガネをかけるわずらわしさから普及を疑問視する向きも少なからずいたのだ。

 メガネなし3D TVの登場はまさに“3D元年”を思わせる出来事だった。アメリカで開催される世界最大の家電ショー・CEATECでも3D TVは目玉製品として紹介されていた。しかし、まるで線香花火のように3D TVは店頭から姿を消す。いま、家電量販店の店頭を賑わせているのは4K TVだ。

 そもそも、TVは「新型TVの登場」で普及が推進されてきた。新たなTVが登場するたびに買換需要が喚起され、家電メーカー、販売店に利益をもたらしてきた。地上デジタル放送”の開始、液晶TVの登場による大画面薄型TVの普及が1990年代末から2000年代初頭に起こる。その次の矢が“3D TV”だったはずなのだ。

 3D TVが普及しなかった理由としてはさまざまなものが挙げられる。
「テレビに正対しなければ3Dに見えない」「専用のメガネがいる」「3D TVが高額過ぎる」といったものから、根本的な「コンテンツが少なすぎる」というものがある。

 カラーテレビや音声多重テレビ、ハイビジョンTVのそれぞれ普及の鍵となったのは、「放送される番組がそれに対応していた」ことだ。しかし、3Dで放送されたTV番組を見たことがない。DVDやBlueRayでも、3Dコンテンツは希薄だ。これでは普及するはずがない。

 古くからあるSF小説やSF映画では、3D TVが当たり前に存在する未来が描かれてきた。『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989年/ロバート・ゼメキス監督)では、2015年の“未来”で3D TVが普及していた。技術的には可能だったが普及しなかった、未来予測の“ハズレ”だったと言える。