一方、ヨーロッパは、混乱しつつも、社会的にはまあまあ安定しているといったような姿に見えてきました。

 そして、イギリスが危機的な状況にあるということから、アメリカの問題にも向き合うことになったんです。

 世界のシステムを考えていくうえで、どの国が問題なのか。世界が不安定化していくその中心にあり、世界がこれから先に向き合わないといけないのはアングロサクソン圏、とくにアメリカの「後退のスパイラル」なのだということに気づいたんです。問題はロシアでも中国でもなく、アメリカなのです。

 私はいま、よくこう言います。いまの人類が直面している問題は二つある。地球温暖化と、アメリカだと。

 この戦争がどういう形で終わるのか、はたして終わりがあるのかわかりません。その理由としては、不確実性ですね。

 ロシアやアメリカの軍需生産力というのが不確実ななかで、どう終わるのかということは、なかなか見えづらいということはあります。

 ただ、さまざまな終わり方の可能性を考えていくと、アメリカ社会が貧困化などの問題で後退のスパイラルにますます入り込んでいくことによる「アメリカの崩壊」もあり得るのではないかと考えています。

 フランスのジャーナリストは恐らくロシアのほうが50%くらいの確率で崩壊すると見ているでしょう。でも、私は5%ほどではありますが、アメリカが崩壊することもあると見ています。

 そして、イギリスもおそらくこれから後退し、崩壊を迎えるのではないかと。その可能性があるというふうに思います。

池上 実は一番の危機は、アメリカの危機ではないのか。みんなロシアが危機だ危機だと、日本ではいろんな人が言っているんですけど、実はアメリカが大変な危機的な状況なんだということですね。

 確かに、アメリカ国内での分断ということは、明らかに進んでいるように見えます。

 共和党自身の内部が分裂をしてしまって、下院の議長が15回も投票しなければ決まらないような状態になっているときに、トランプさんが「選挙に出るんだ」と言ってしゃしゃり出てくる。だけど、共和党のなかでも、そのトランプさんについていくという人ばかりではない。

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「米国が唯一の大国でいいのか」