ヌーズのキャットタワー。耐荷重は約20キロ。大国段ボール工業は社員28人。10月に社長に就いた長男洸将さんはスヌーズに触発され、梱包箱以外の商品開発に夢中という
ヌーズのキャットタワー。耐荷重は約20キロ。大国段ボール工業は社員28人。10月に社長に就いた長男洸将さんはスヌーズに触発され、梱包箱以外の商品開発に夢中という
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 堂々たる存在感で、部屋のインテリアにもなるタワー型爪とぎ「スヌーズ」は来年、発売10周年を迎える。製造する大国段ボール工業(福岡県行橋市)は累計約4千個を売り上げ、さらなる進化をめざす。

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 創業60年。地元企業向けに梱包用の段ボールをつくる同社が、本業とは縁遠い「」に着目したきっかけは、2008年のリーマン・ショックだった。複数の取引先が悲鳴を上げ、自社にも影響が及んだとき、2代目社長の寺澤一光(かず・あき)さん(68)=現会長=は戦慄した。「法人相手のBtoBだけではだめだ。次の一手が必要だ」。リスクを分散するためにも一般消費者向けの事業を始めたい。何を手がけるか。

 暗中模索するなか、猫が段ボールを好むという話題を耳にした。当時出回っていた外国製のまな板型の爪とぎを手にすると、プロの目が光った。「ウチの技術なら、形も質もずっといいものが作れる」。同時に長男洸将(こう・すけ)さん(41)=現社長=が幼少期に口にした「段ボール屋さんって格好よくない」という言葉を思い出した。「よし、やる以上は本当にいいものを作ってみせる」。耐久性とともにデザインにも凝った。

 2013年の初頭に仕上がったのは高さが約1メートルにも及ぶオブジェのような「作品」。S字型のカーブは、美しさだけでなく、強度を維持する計算に基づいている。「我ながら、すげえ格好いいものができた」。自画自賛した直後、はたと困った。売るためのルートがない。「自社ホームページで販売を始めたけれど、誰も見てくれない(笑)」

 数カ月じりじりと過ごすうち、想定外の吉報が舞い込んだ。ダメもとで応募していた日本デザイン振興会主催の「グッドデザイン賞」に選ばれたのだ。メディアがこぞって紹介し、スヌーズは一気に全国区の脚光を浴びた。今もスヌーズに載った愛猫の写真がSNSに続々とアップされている。

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「非常に高いと思います」