愛知工科大学によるスマホ操作をしながらの自転車運転の実験(東愛知新聞提供)
愛知工科大学によるスマホ操作をしながらの自転車運転の実験(東愛知新聞提供)
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 携帯電話を片手に持ち、しかも電話をしながら自転車で走る人たち。携帯電話が普及し始めたころからよく見かける光景だが、実に危険だ。さらに最近では、若者を中心に、スマートフォン(スマホ)の画面を見ながら走る人も多く、チャットやメール、ゲームなどをしているのか、食い入るようにスマホの画面を見ているため、当然ながらまともに前を見て走ってはいない。電話をしながら走るのも、スマホの画面を見ながら走るのも、非常に危険で悪質きわまりない行為だ。

 インターネットプロバイダの@niftyが「気になる自転車のマナー」についてアンケート調査を行ったところ、「携帯・スマホをいじりながら運転している」が有効回答数5,957票のうちの76%に当たる4537票を集め、1位となった。また、東京都内で、自転車に乗りながら携帯電話やスマホを操作していたことが原因で起こった事故が、2010年から昨年まで年々増加しており、昨年だけでも36人が救急搬送された。

最近では、2014年5月8日に富山県高岡市で、スマートフォンの画面を見ながら自転車で走っていた17歳の少年が女性にぶつかり、女性は転倒によって骨折などの重傷を負った。事故を重く見た富山県警は、少年を重過失傷害容疑で書類送検したという。

 では、スマートフォンを操作しながらの運転はどれほど危険なのか?

 愛知工科大学工学部情報メディア学科の小塚一宏教授は、交通の安全性向上を目指し、運転中や歩行中の人間の視線や動作についての研究を行っている。小塚教授の研究結果によると、歩きながらスマートフォンの操作を行った時には、視野が通常の20分の1になるのだという。このように視野が狭められた状態で自転車に乗ることが、いかに危険であるかは想像に難くない。

 自転車はれっきとした車両である。「歩き」の延長ではなく、車両を運転しているという意識を持つことが大切だ。そして、携帯電話やスマートフォンを操作する場合には、必ず安全なところに止まってから行うようにしたい。事故を起こしてからでは遅すぎるのだ。

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