デジタル絵本を利用した読み聞かせの様子(京都大学提供)
デジタル絵本を利用した読み聞かせの様子(京都大学提供)
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 京都大学霊長類研究所(愛知県犬山市)の正高信男教授(認知学習分野)らの研究グループは、4歳児にナレーション機能付きのデジタル絵本で読み聞かせをした場合、紙の絵本で読み聞かせをした場合に比べて、読めるひらがなの数が増えた、という実験結果を発表した。仕事に家事にとフル稼働で、なかなか読み聞かせの時間が取れない保護者にとって、朗報となるかもしれない。

 正高教授によると、絵本の電子書籍化も充実し、デジタル書籍の普及が進む欧米では、デジタル書籍が子どもの発達に与える影響についての議論が盛んにもかかわらず、実証的な研究は行われてこなかったという。

 実験に用いたのは、“バスくん”と“ねずみくん”が“おりひめさま”の願いをかなえるために、星空で奮闘する『たなばたバス』(藤本ともひこ作・絵)。正高教授らは、出版社の協力を得て、ナレーションに合わせて文字が赤く表示される機能を備えたデジタル絵本を作製。iPadにダウンロードし、4歳児15人に毎日2回、6日間にわたって読み聞かせをしたところ、読めるひらがなの文字数が、平均して3文字、多い子どもは6文字読めるようになった。一方、紙の絵本を使い、母親が読み聞かせを行った別の15人には、このような学習効果はみられなかったという。

 正高教授は「音と色でどの文字を読んでいるのかが分かりやすかったのではないか。この研究は紙の絵本を否定するわけではなく、子どもの発達に効果的なデジタル書籍の開発につながればいい」と話している。今後は、他のデジタル絵本を用いた実験や、書く能力に及ぼす影響を調べる実験を検討しているという。

今後の研究の進展によっては、日本でもデジタル絵本が大きく普及するきっかけになるかもしれない。