国立大の大学院を博士課程まで修了しても就職先がない──「高学歴ワーキングプア」とも呼ばれる人々をめぐる悲惨な実態が2000年代後半、注目を浴びた。本書はそうした議論を継承しつつ、高学歴者のなかにある隠れた「男女の差」について問題提起を行う。
 1980年代以降、博士課程で学ぶ女性の数は急増しているものの、専任教員の女性比率は際立って低い。正規雇用されない女性たちが行きつく先は非常勤講師という不安定な身分で、非常勤講師率は男性の2倍以上という。女性の教員は実に40%が非常勤講師なのだ。データとともに明るみに出されるのは「高学歴女子」を取り巻く厳しい現実と、それを産み出した社会構造だ。
 著者のうち2名は当事者であり、非常勤講師はセクハラに曝されやすいなど、語られる実態は生々しい。自らの半生を顧みた手記も一読の価値がある。けれども本書の最たる意義は、悲惨さを訴えて終わるのではなく、その奥にある「女子にとっての知性や学歴とは何か?」という問いの提起だ。その矛先は男性にも向けられている。

週刊朝日 2014年6月27日号

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