本書は現代日本の食事情を土台に政治意識を考える、という斬新なコンセプトに貫かれている。
 近年、日本人の食意識は二分していると著者はいう。他方には地産地消やスローフードに代表される健康志向の「フード左翼」が、もう他方にはマックやB級グルメなど、安さと量を重んじるジャンク志向の「フード右翼」が存在する。多くの日本人は後者にあたるという。友人や家族など身近にも当てはまる人はいるだろう。「左翼=革新/右翼=保守」という構図に照らせば、前者は大量生産による食の安全性破壊を批判し、他方後者は食に競争原理を組み込み市場多様化を追求する。
 一見、政治と食とは無縁に思える。しかし例えば、アメリカではコーヒーを飲みながらアップル製品でネットニュースを読む都市リベラル層を「スターバックス・ピープル」と呼ぶ。政治は生活スタイルや消費態度の問題でもあるのだ。なぜこれまで両者を切り離していたのか疑問に思えてくる。切り口の面白さはもちろんのこと、遠くにある「政治」を足元から再考できる良書だ。

週刊朝日 2014年1月31日号