映画『タンジェリン』に使用されている“トラップミュージック”とは? サウンドクラウドで出会う未知数の音楽たち
映画『タンジェリン』に使用されている“トラップミュージック”とは? サウンドクラウドで出会う未知数の音楽たち
この記事の写真をすべて見る

 超低予算を逆手にとった創意工夫と綿密なリサーチ、確かな技術力で世界中の映画祭を席巻したまったく新しいガールズ・ムービー『タンジェリン』が、2017年1月28日より渋谷シアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開される。

映画『タンジェリン』画像

 LAで生きるトランスジェンダーの恋愛や日常を描く本作は、全編iPhoneで撮影しており、主人公たちの息づかいや街の空気感をリアルに捉えているが、さらに映画にスパイスを効かせているのが、様々なジャンルの音楽だ。なかでも注目すべきは、アメリカをはじめ全世界で急速に人気が拡大している“トラップミュージック”。“トラップ”とは、コカインの密売所を意味するスラングで、重低音を強調したビートとスネアドラムの連続音、サイレンやシンセによる派手な電子音を組み合わせて生み出される中毒性の高いリズムが魅力の音楽である。

 本作の編集中に動画共有サービス「Vine」(現在は提供終了)に夢中になっていた監督が、偶然みつけた当時17歳のウルフ・タイラ(@wolftyla)がアップした動画に使用されていたのがトラップミュージックだった。その音楽に衝撃を受けた監督は、その曲「Team Gotti Anthem」のフルバージョンをサウンドクラウド(無料音楽クラウドサービス「SoundCloud」)で見つけ、映画に合わせてみると、そのビートが映画のリズムにぴったりとあった。監督いわく「まさに結ばれるべき運命だった」。

 音楽使用料に予算を割くことができないと考えていた監督だが、『タンジェリン』のような音楽予算がないインディペンデントの映画にとってサウンドクラウドが新たな道を開くツールであると実感。本作で使用しているその他の曲もサウンドクラウドで発掘していった。「アーティストたちがアップしたプロダクションバリューのとても高い音楽を色々と発掘することができた。彼らのほとんどが音楽会社等と契約していないため、直接交渉がうまくいけば、サントラ用に曲を購入することもできたんだ」と語る。

 全編iPhoneで撮影し、LAの空気感をスクリーンに映し出す『タンジェリン』に、鮮やかな色どりを加えるサウンドに是非、注目して作品を楽しんでほしい。


◎映画情報
『タンジェリン』
1月28日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラム他順次公開
(c)2015 TANGERINE FILMS, LLC ALL RIGHTS RESERVED
配給:ミッドシップ

監督・編集・共同脚本・共同撮影:ショーン・ベイカー
共同脚本:クリス・バーゴッチ
共同撮影:ラディウム・チャン
製作総指揮:マーク・デュプラス、ジェイ・デュプラス

出演:キタナ・キキ・ロドリゲス、マイヤ・テイラー、カレン・カラグリアン、ミッキー・オヘイガン、アラ・トゥマニアン、ジェームズ・ランソン
配給・宣伝:ミッドシップ
2015年/アメリカ/英語・アルメニア語/88分/カラー/シネスコ/原題:Tangerine