奈良市内の街頭演説中に襲撃され死亡した安倍晋三元首相(67)の遺体を乗せた車が、9日午後1時30分ごろ、東京・渋谷の自宅に到着した。
事件直後に奈良市内の病院に駆けつけた妻の昭恵さんも、安倍元首相の遺体を載せた車に同乗。昭恵さんは車から降りることなく、自宅マンションの駐車場にそのまま入って行った。後部座席に乗っていたとみられる昭恵さんの様子をほとんど確認できなかったが、カメラマンによれば車内でうつむいているようにも見えたと言う。
事前に安倍氏の自宅を訪れていた自民党の高市早苗政調会長ら数名が、黒い服をまとい、気温30度を超える中、自宅前に並んでいた。高市氏は少し目を腫らした様子で、黒色のマスクをして終始うつむきかげん。手には数珠を持っていた。
週末ともなれば車列で常に渋滞となる幹線道路から少し入った閑静な一角に、自宅はある。その大きな通り沿いには多くの人が集まり、安倍氏の帰宅を待っていた。辺りには多くの警官が配置され、警戒に当たっていた。
到着するまで、自宅には白い花やひまわりなど色とりどりの花を届ける業者がマンションを出入りしていた。
■夫婦水入らずで「お散歩」も
自宅周辺は坂道が多く、車1台がやっと通れるような細い道が入り組んでいる。車で賑やかな幹線道路側とは異なり、人の目があまり気にならない、静かな一帯が広がっている。
近くに住んでいるという40代の男性は、1年くらい前に安倍氏と昭恵夫人が散歩しているところをすれ違ったと言う。
「日が暮れかかったころです。ご自宅のほうから坂道をくだってきて、細い脇道を抜けていきました。昭恵夫人はおしゃれに颯爽と、安倍さんのほうは、どこかくつろげるような服装でやさしい印象でした。あれ?って思ったのは、私が気づいたときにはSPや警察官の姿がまわりに見えなかったんです。夫婦水入らずで近所を散歩されていたのかもしれませんね」
政界でも仲の良い夫婦として有名だった安倍夫妻。しかし、参院選の応援演説先で凶弾に倒れた安倍氏は、昭恵さんと長年暮らした自宅に、無言の帰宅となった。
遺体を乗せた車が自宅マンションに入ったおよそ20分後、弔問のため岸田文雄首相が安倍氏の自宅に訪れた。約10分間滞在し、安倍氏の遺体と対面したとみられる。
(文/岩下明日香、AERAdot.編集部)