先日、韓国のフェミニストたちと話す機会があった。韓国は今、かつてないほどの規模のフェミニストやクィアに対するバックラッシュが起きている。先日、クィアイベントがソウルで行われたときには、同時にアンチの集会が開かれ1万5000人が訪れた。多くが若い男性だったという。前々回の大統領選挙では候補者がこぞって「私はフェミニスト」ということをアピールしていたが、今回の大統領選挙ではジェンダー平等を推進する女性家族省を潰すことを公約に掲げた候補者が当選した。なぜバックラッシュが激しく起きているのか、これからどうしたらいいのか。そんなことを韓国のフェミ友と話したが、彼女たちの答えはシンプルで、鋭かった。

 「バックラッシュは、完全に政治主導で起きてます。保守の政治家たちが、デマをいとわず、フェミニズムや性教育を攻撃しています」

 バックラッシュの理由としてよくいわれるのは、男女平等が行き過ぎて、むしろ男性に不利な社会になってしまったためにバックラッシュが起きる……ということだが、それは正しくはないという。むしろ、性平等を快く思わない集団が、政治的力を使って国民を分断させているというのが、バックラッシュの正しい姿ではないか、と韓国フェミニストたちは口をそろえた。だからこそ、なぜバックラッシュが起こるのか、バックラッシュを扇動する政治家は誰か、彼らの目的は何かを追及することが大切なのだ、と。

 バックラッシュを正しく定義することがバックラッシュを乗りこえる唯一の道。そういう意味で、日本は、バックラッシュを振り返り、定義し、乗りこえる機会を失い続けてしまったのかもしれない。そして今は、最後のチャンスのような気もする。山谷えり子さんを始めとする自民党の政治家たちが、何を目指し、何のために、過去の自分と全く違うような発言もモノともせずに、フェミニストをたたき、性教育をたたき、セクシュアルマイノリティーをたたき続けてきたのかという理由を、私は知りたい。

著者プロフィールを見る
北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

北原みのりの記事一覧はこちら