元自衛官の五ノ井里奈さん(22)が、陸上自衛隊に所属していた昨年に受けた訓練中の性被害について、検察審査会の結果が9月7日付で出たことがわかった。結果は「不起訴不当」。再度、検察によって事件が捜査され、改めて起訴するかどうか判断されることになる。この結果について、五ノ井さんに胸のうちを聞いた。
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今年6月下旬、五ノ井さんは、2020年に陸上自衛隊に入隊してから、日常的にセクハラを受けてきたことを告白した。そのうち、21年8月に山の訓練中に3人の男性隊員から受けた性被害について警務隊に「強制わいせつ罪」で被害届を提出したが、22年5月31日付で「嫌疑不十分」とされ男性隊員らは不起訴になった。
その後、五ノ井さんは、6月7日付で検察審査会に不服申し立てを行った。8月31日には、防衛省を訪れ、第三者委員会による公正な調査を求める10万5千超の署名と自衛隊内におけるハラスメントの声を集めたアンケートなどを木村次郎防衛大臣政務官に提出した。
それらを受けて、9月6日には浜田靖一防衛相が、自衛隊内のハラスメントに関する特別防衛監察を実施すると発表するなど、少しずつ事態が動いていた。
こうした中、9月7日付の検察審査会の結果が、9日に五ノ井さんの手元に届いた。AERA dot.が現物を入手して確認すると、書面には「被疑者らについて、本件不起訴処分は不当である」と記され、その理由がこう示されていた。
「本件では、現状において、被疑者らが被疑事実を否認し、目撃供述がないほか、わいせつ行為の存在を裏付ける客観的証拠もなく、唯一の証拠は被害者供述のみである。唯一の被害者供述を排斥し、公訴提起の途を絶つ結果、被害者に泣き寝入りを強いる以上は、その意味からもまた、被害者供述の信用性の判断をより慎重に行う必要がある」
さらに続く。
「然るに、不起訴記録を精査すると、(1)被害者供述の信用性を判断する上での捜査及び(2)本件犯行の目撃者の存否に関する捜査のいずれについても、十分に尽くされたとは言い難く、また、(3)その他捜査が十分に尽くされたとは言い難い点もあると言える」