出陣前だけでなく、予定された合戦場に到着後も「評定」を開く。地形や物見からの最新情報をもとに、作戦の練り直しや変更を行っていた。週刊朝日ムック『歴史道別冊SPECIAL 戦国最強家臣団の真実』から(イラスト/瀬川尚志)
出陣前だけでなく、予定された合戦場に到着後も「評定」を開く。地形や物見からの最新情報をもとに、作戦の練り直しや変更を行っていた。週刊朝日ムック『歴史道別冊SPECIAL 戦国最強家臣団の真実』から(イラスト/瀬川尚志)
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 日本の合戦では勝利を得るために、規則や手順などの作法が決められていた。それは、開戦前の作戦会議から縁起担ぎ、合戦中の行動、さらに撤退時の「陣払い」まで多岐に及んでいる。週刊朝日ムック『歴史道別冊SPECIAL 戦国最強家臣団の真実』では「合戦の作法」を特集。ここでは合戦前夜に行われる最後の評定から合戦が決着に至るまでの兵士の動きなど、合戦の流れを解説する。

【意外と知らない「合戦の流れ」をイラスト解説!(計7枚)】

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 合戦は、まず評定において、敵と味方の戦力を比較検討したうえで、どのくらいの勝算があるかを導き出すことから始まった。古代の中国において、このような評定は、先祖を祀る宗廟で行われたことから廟算という。甲斐の戦国大名武田氏の軍法を記した『甲陽軍鑑』によれば、武田氏の評定は、重宝の大鎧「楯無」と日章旗「御旗」の前で行われ、そこで決められたことは、くつがえることはなかったという。先祖伝来の重宝の前での評定は、廟算と同じ意味を持っていたといってよい。

週刊朝日ムック『歴史道別冊SPECIAL 戦国最強家臣団の真実』から(イラスト/瀬川尚志)
週刊朝日ムック『歴史道別冊SPECIAL 戦国最強家臣団の真実』から(イラスト/瀬川尚志)

 兵法書の『孫子』に、「算多きは勝ち、算少なきは勝たず」(計篇)とあるように、勝算がある者が勝ち、勝算がない者が負けるというのは、当然であった。評定において勝算があると判断されれば合戦に踏み切ることになったし、当然、勝算がないと判断されれば合戦に踏み切ることはなかった。

 評定で合戦に踏み切ることが決定すれば、軍勢が招集される。主君と家臣との関係は、いわゆる「御恩」と「奉公」の関係にあったから、主君から知行を与えられている家臣は合戦に際し、知行に見合うだけの軍勢を引き連れて参陣しなければならない。こうして招集された軍勢は、いったんは大名のもとに集結したうえで隊列を組み、戦場へと出陣していくことになった。

週刊朝日ムック『歴史道別冊SPECIAL 戦国最強家臣団の真実』から(イラスト/瀬川尚志)
週刊朝日ムック『歴史道別冊SPECIAL 戦国最強家臣団の真実』から(イラスト/瀬川尚志)

 戦場となる場所は、あらかじめ決まっているわけではない。野戦の場合、合戦が行われたのは、双方の勢力圏が接するあたりの、平地、山地、河川などが多かった。双方が布陣をしたあと、夜明けなどを待って戦闘が始まるというのが一般的な流れである。

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