ただ、同大学のように、コロナへの感染・重症化リスクなどを理由にオンラインでの受講を学部と教員の権限で“個別配慮”として認めたり、オンラインと対面を多様に組み合わせた「ハイブリッド授業」を導入したりするなど、新たな授業の形も実践が始まっている。そこで起きたのが、キャンパス内でオンライン授業を受けるという一部の学生の動きだった。
「授業は対面が一番良い」という固定観念を取り払えば、時間割によって、授業の評価方法によって、あるいは体調、就活中などの理由から、制限された環境でも自分に合った受講方法を効率的に選べばいい――。学生たちのそんな意思が見えてくる。あえて対面、あえてオンラインとする意義を学生とともに考える局面にあるのだ。
■オンラインの限界も 「あえて対面」の理由は?
「コロナによって、学生たちの学びのスタイルが多様化し、その変化を大学も注目しています」と、同大学の松原洋子副学長は話す。定点観測している学生アンケートの自由記述欄には「オンデマンド授業の場合、わからないところを繰り返し見られるから復習できる」などの声があり、「教室に来ない=意欲低下」ではなく、むしろメリットを生かして勉強したいという学生の熱意を感じた という。
一方、対面で受けたい授業もあると学生たちは言う。「少人数で議論するゼミは対面で受けます。オンラインでは相手の空気感がわからないし、同時に話せないから会議が盛り上がらない」と、先の林田さんは話す。
同大学情報理工学部3年の下田明日香さん(21)は、自宅からの通学に片道2時間かかるため、ハイブリッドのときは自宅でのオンライン受講を選ぶ。しかし「あまり得意じゃないプログラミングなど、情報系の授業は対面がいい」という。オンライン授業の場合、質問したいときはZoomの別室にいるティーチング・アシスタントにメッセージを送るが、「こんな些細なことを聞いていいのかな」と躊躇してしまう、というのが理由だ。
また、人生を動かすような偶然の出会いも、オンラインではなかなか起きにくい。