11月15日のニューヨーク市場で円相場は対ドルで上昇し、一時1ドル=137円台と約2カ月半ぶりの円高水準になった。10月の1ドル=151円台後半という円安のピークと比べると10円以上円高に傾いたことになる。
【グラフ】過去に超円安局面だった時の米ドル/円の推移はこちら
「今後、物価上昇率は緩やかに減速していく」という見方もあるが、それでも輸入品の高騰などに伴う値上げの波は家計にのしかかっている。だが、悲鳴を上げているのは庶民だけではない。外国のセレブたちと交流し、優雅な生活を送っていると思われていた海外の在外公館に勤める外交官たちも生活が成り立たない状態になっているという。アジアのある国の在外公館に勤める外交官は言う。
「在外公館職員の手当は日本円が基準なんです。現地の物価はどんどん上がるし、インターナショナルスクールの学費もドル払い。知り合いの外交官は、『ドル建ての口座の残高が無くなった』と嘆いてました。外交以前の問題として、生活が成り立たないです」
今年に入ってから急激な円安が進んだにもかかわらず、手当や経費が日本円で計算されているとは、どういうことなのか。
外務省によると、在外公館職員の給料は大きく分けて二つある。一つは基本給。これは、日本国内にある口座に日本円で支払われる。もう一つが在外基本手当で、日本で暮らすのと同様の生活環境や水準を維持するために支給される。この支給額がドル建てで決められているのであれば、問題はない。ところが日本円で定められており、現地通貨の“手取り”は為替の影響を受けてしまう。さらに、毎月の支給額をいくらにするかは、昨年度の為替レートを参考にしてあらかじめ決められている。そのため今年に入ってからの急激な円安で、現地通貨に両替すると手取りが減ってしまった。
具体的にはこうだ。毎月30万円の在外基本手当が出ている外交官がいるとする。現地通貨がドルの場合、今年度の基準レートは1ドル=108円。為替の変動がなく、手当振り込み時に1ドル=108円であれば約2778ドルが振り込まれることになる。ところが、現在のように1ドル=137円になると、約2190ドルしか振り込まれない。やっている仕事は同じなのに、約21%も振込み額が減ってしまうのだ。